宿泊編
白ヒゲ海賊団一番隊隊長と二番隊隊長。
その二人ともなれば、お金なんて湯水のようにある。
自然、二人の泊まる宿は上質のものだった。
島の海岸沿いに建てられた10階立ての宿。
その最上階の部屋を二人は借りた。
そして見回してみれば、サッチやらビスタやら他の連中も同じように泊まっていて、これじゃあまりモビーと変わらないなとも思うが。
気分は高揚していた。
陸に上がって羽を伸ばすというのは、海賊がこういうのも不思議だが、見知らぬ土地に小旅行しているような心持ちに成るのだ。
部屋の夜景は最高な眺めだった。
宝石を引っ繰り返したような海辺の町の明かり。
夜の海の轟くような潮騒。
それを横目にエースとマルコは部屋で着替えたり荷物を広げたりしていた。
そしておもむろにエースが口を開く。
「マルコー、晩メシどうする?
そこらで喰うか?」
エースが靴を、気軽なスリッパに履き替えながら問う。
「下の階にレストランがあったから、そこで良いかよい?」
マルコは部屋の鍵をくるくると回しながらエースを見た、そして幾分呆れて、
「お前・・・海賊の癖に、靴を脱ぐなよい。
万が一の時に対応ができねぇぞい」
ふぅっと溜息を零すも、一瞬の後には優しく笑った。
「お前は命に代えても俺が守るけどねぃ」
そしてマルコは手元の荷物を「よいしょ」と持ち上げて整理し出す。
エースがその黒曜石の瞳を見開いて、頬を染めてることに気付かずに。
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