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エースが太陽のように笑った。
「あっマルコッ!あそこの肉饅食べてこうぜ!!」
俺はそれに頷いて応える。
過去に出来なかった分、エースが望むことを叶えてやりたいって思った。
エースが死んで、叶えられなかった全てのことを、叶えてやりたいよい。
わりと島の中では有名な饅頭屋なのかもしれない、
店頭で何段もの櫓で白い湯気を出しながら、ふかしていた饅頭にエースが釣られて、
二人で暖簾をくぐると、
白ヒゲの兄弟連中、10数人が肉饅に凄い勢いでパクついていた。
「あー隊長!」
「マルコ隊長!」
「エース!!」
肉が好きなのは海賊の性分なのだろう、
でも食いかけを飛ばすなよい。
落ち着きが無い連中だ。
俺が少し呆れも交じって笑うと、
エースも隣りでニコッと笑う。
「おー俺も参戦するぜ!食い倒れだぁ!」
エースが腕を高く上げた途端にワァッと歓声が沸く、エースは全く人を惹き付ける。
「ほどほどにしろよい」
そういってエースのテンガロンハットを後ろから引っ張って背に落とすと、癖ッ毛の頭があらわになる。
「おぅ!」
振り返って、またエースは笑う。
楽しそうに笑う、その楽しさが俺にも伝わって、胸が暖かかった。
「へい!おまち!!」
店主の威勢の良い掛け声。
椅子に腰掛けて直ぐに、さっき店頭で買った肉饅が10個ほど運ばれてくる。
とエースが礼儀正しく両手を合わせた。
「頂きます」
こういう所がエースは可愛い。
年をくった大人が忘れてしまった大事なことをエースは今も持ってる。
俺も「頂きます」と言って肉饅に手を伸ばす。
噛んだ瞬間に肉汁がジュワッと出てきて旨い。
「へぇ」
俺の少し驚いたような表情と声に、隣りで俺と同時に食べて、食べながらも俺を見ていたエースが二カッと破顔した、
「うめぇなマルコ、旨いもん食べると、辛いこと少しは吹き飛ぶだろ?」
暖かい声だった。
そう言われて不覚にも胸が熱くなった。
エースは優しい・・・
俺はエースの為に島を一緒に回ろうっていう気持ちが少しあった、けどそれはなんて傲慢だったんだろうか。
俺はこんなにも、エースに救われてる・・・
『ただ辛い・・・しんどいんだよい』
そう打ち明けた俺をエースは励まそうとしていたんだろう。
俺は幸せもんだよい。
しみじみそう想って微笑む。
エースも微笑む。
手を伸ばして、その癖ッ毛をクシャクシャと撫でると、そういえば昔はエースを撫でたことなんて無かったことに気が付いた。
この「弟」を、大事にしてなかった。
エースを大事にしてなかった自分に吐気がする。
でも今は幸せだ。
エースと生きてこうやって新しい時間を過ごしている俺は幸せだと思えた。
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