SIDE・M

エースと上陸することになった。
二人で。
以前の記憶ではエースと二人で上陸した記憶など無い・・・・・いや一回だけ誘われたことがある。

その時俺は断った。

『仕事がたまっててねぃ、悪いな、エース』

そう、あっさりと断った、それにエースは仕方ねぇなぁと微笑んで、他の奴等と回ると言った。

あの時、エースが居なくなるなんて考えもしなかったから・・・

当たり前にエースと上陸するなんて何時でも出来ると思ってた、最後になると知っていたら、俺はエースと上陸して思い出を作った・・・
エースが欲しいって言う食べ物は全部、買ってやっただろう。
エースがしたいということは全部、乗ってやっただろう。

時間は戻せない。

でも・・・今回は新しい運命が描き出された。

俺もエースも隊長だし、俺は自然、サッチやビスタ、ジョズといった古参の奴等とつるんだし、エースもエースで長年一緒に居たスペード海賊団の奴等とかと上陸し羽を伸ばしていた。

今回立ち寄った島は以前の記憶が正しければ、俺はビスタとサッチ、エースは元・スペードの仲間と回ったと思う。

なぜ今回はそうならなかったのかといえば、俺がエースを食堂から掻っ攫って自室に連れ込んで、あろうことか目の前で泣いてしまったからだ。

マリンフォード決戦のエースの死が重くのしかかり過ぎて、我ながら情緒が不安定すぎる。

だからそんな俺をエースは放っておけなかったんだろう。

エースは優しい。

オーズもよく『エーズくんはやさしい』と言ってた。

エースは自身が幼い時から傷付けられてきたから人の痛みをよく知っている・・・傷付いてる人間に絶対に手を差し伸べる。

そこまで考えて俺は甲板に続くドアをガチャと開ける、陽光が眩しい。
目を向けると、その陽光の中でエースが船の縁に凭れて立っていた。

「待たせたな、エース」

そう声をかけると柔らかくエースは笑った。
鮮やかなテンガロンハットに白いシャツ。
そして決まりの黒のハーフパンツ。

エースらしい爽やかな格好に俺は好ましく想う。
若いって良いねぃ。
飾り気が無くても似合ってる。

「行くよい」

そう言ってエースの髪をくしゃくしゃと混ぜるように撫でると、エースは太陽に負けないぐらい明るく笑うから、俺も元気が出た。




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