上陸前編
SIDE・A
マルコと一緒に上陸する。
子供みたいだと想う、こんなことに俺の胸はうるさく騒ぐのだ。
マルコと一緒に陸を回るのは初めてだから・・・
マルコと俺は年が離れてる、モビーに乗船している年月も全然違うから過去のモビーで起こった出来事を俺は余り知らない。
マルコと仲は悪くないけど、自然、マルコはサッチやビスタやジョズといった古参の兄弟とつるんでいた。
食事とか飲みの時とか、それは自然なことで、だからこそ俺はマルコに近づけなかったし、俺自身もグランドラインに入る前からずっと一緒に居たスペード海賊団の連中と自然とつるんだ。
だからマルコと二人で上陸するのは初めてだったし、マルコを意識している俺にとっては凄く大きな事だったんだ。
春島の気候は暖かい。
モビーの甲板で俺は胸一杯にその空気を吸い込んだ。
「待たせたな、エース」
低い玲瓏な声に呼ばれて俺が振り返ると、丁度、マルコが船室から出てくる所だった。
金髪が陽光に照らされて潮風に柔らかく揺れている。
その蒼の瞳は理知の光を湛えて海のように覗き込んだら吸い込まれそうだった。
白いシャツは襟に銀糸でさり気無く刺繍され、腰布は深い藍に染められた絹布、そしてそれに嫌味でなく金とアクアマリンの装飾ベルトが巻かれている。
男の俺から見ても「良い男」だった。
申し分が無い。
そしてその「良い男」は俺に向かって飛び切り優しく微笑む。
「行くよい」
低いけど柔らかい声。
大きな手が伸びて髪の毛をクシャクシャと混ぜるように撫でられて、こそばゆい様に凄く嬉しかった。
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