SIDE・A
エースにとって世界は冷たかった。
ゴール・D・ロジャーの息子として生を受けたその瞬間から、世界にはエースの場所は無い筈だった。

世界には必要ない人間がいて俺は存在してはいけない人間なのだと思っていた。

生きていてはいけない存在・・・

それなのにオヤジは「息子になれ」と言ってくれた。
存在しちゃいけない俺を「息子」にしてくれた。
なんで俺を受け入れてくれるのか分からなかった。

「父親」なんて知らない。

でも「オヤジ」は知ってる。
こんなに大きくて暖かくて俺の存在全てを赦してくれてる。
「息子」と呼んでくれる、俺を受け入れてくれる。

もしもロジャーが生きていたら俺を「息子」と呼んだだろうか?

『女の子ならアン、男の子ならエース』

そう言った『父親』。

でも『オヤジ』は俺の中でエドワード・ニューゲードだけなんだ。

俺の心の中で一番柔らかい場所が『親』だ。

それは今でも変わらない。

そして一番暖かい場所がルフィとサボという『兄弟』とジジイという『家族』だった。

けれどそれは今は、変わった。


兄と弟は俺にとって特別な響きを持っている。


そしてマルコは俺を「弟」にしてくれた人なんだ。
マルコの言葉で白髭海賊団に入ることを決めた。

惜しげもなく与えられるその愛情を「息子」にならなければ気付かなかった全てのことを・・・俺は『兄弟』になって知った。

切っ掛けはマルコの言葉。

マルコは「オヤジ」と新しい「兄弟」をくれた「特別な存在」だ。


何度も何度もオヤジに返り討ちにあって、傷付いて甲板で項垂れている俺に湯気の立っているスープをマルコはそっと置いた、

そんなマルコに俺は思わず尋ねていたんだ、ずっと抱えていた想いを、


お前ら何で「あいつ」のこと"オヤジ"って呼んでんだ・・・・・・?


幾分かの沈黙の後に響いたマルコの声は酷く柔らかくて暖かかった。



あの人が・・・"息子"と呼んでくれるからだ。
おれ達ァ世の中じゃ嫌われ者だからよい


・・・・・・嬉しいんだなァ


ただの言葉でも嬉しィんだ



「息子」・・・自分が求めていた居場所に似ていて、胸が熱くて堪らなくなった、涙が零れそうになって耐えて、



そろそろ決断しろい、この船を降りて出直すか・・・


"白ひげ"のマークを背負うか・・・!!



それが全ての始まりそんな気がする・・・

そして今・・・

マルコから食堂から連れ出されて、
マルコの部屋で「辛い」と打ち明けられ、
弱っているマルコを抱き締めながら俺はマルコの「兄弟」で幸せだと想った。

本当に幸せだよ、俺でも誰かの支えになれている・・・手を差し伸べられる・・・

マルコが教えてくれる世界が酷く優しい・・・

「マルコ」

そう呼べば幾分か強く抱きしめ返すマルコに・・・胸の暖かさが募る。
マルコの弱いとこを堪らなく支えてあげたいと想う。

好きだ、大好きだ、大大好きなんだ。

マルコが・・・大切なんだ。


そう想うと俺の心臓がとくとくと動く。
その想いのままに。

「明日さ一緒に島回ろうぜ、マルコ」

そう言っていた、これが今の俺の精一杯・・・




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