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SIDE・M
エースの手を取って食堂を出た、マルコの頭の中は混乱していた。
早足のマルコに合わせながら、エースが、
「マルコ!どうしたんだよ!何か俺やったのか?」
と尋ねてくるのをマルコは緩く首を振る。
違う。
俺は、ただただ・・・
エースがティーチの側に居るのが我慢できなかったんだよい。
それだけで攫うように連れ出した。
甲板に出ると潮風が吹き付ける・・・
マルコはモビーディック号の広い甲板から階段を登り、自室までエースの手を離さなかった。
エースを導いて先に部屋へ入れて、バタンとやけに大きな音がしてドアが閉まる。
そして沈黙。
言葉が出ない。
エースが幾分か戸惑っている。
当たり前だ、だって用事などないのだから・・・マルコはここで腹をくくった。
「悪い・・・用事なんてないんだよい」
エースの少し驚いた漆黒の瞳。
けど何を言うでもなく、マルコの言葉を待ってくれている。
それに救われる・・・
エースが此処にいる事に救われている。
ティーチが全ての引き金となり、起こったマリンフォード決戦でエースを俺は喪った。
違う、死んでないよい!
エースは死んでない!生きて此処に居る!!
あぁ、俺は、馬鹿だよい。
言葉が詰まるけれど、
「・・・ただ辛い、しんどいんだよい」
零れ落ちた言葉と共に涙が溢れる、いつからこんな涙腺が脆くなったのか・・・
これから起こる未来を知っている自分が何故ここに来たのだろう。
何故、俺は・・・
「エース」
手を伸ばす、喪ったはずのぬくもりへ。
エースはフワッと仕方ないといった柔らかな微笑で受け止めてくれた・・・あたたかい。
そのあたたかさを抱き締める、
掻き抱く、
抱き締めたままでいさせてくれる、
エースは優しい。
エースの存在が愛おしい。
マリンフォードでエースの遺体を抱き上げ、自分の命が熱がエースへ、移るように願って抱き締めた時は、氷のように冷たかった・・・
今はあたたかいけれど、情景が重なり・・・途端に胸が哀しみと喪失感に痛んだ・・・
違う、今はエースは生きているんだよい!!
そう言い聞かせて、目の前のエースを強く強く抱きしめて、その時が俺を苛むのに、
声が、
「マルコ、大丈夫だ。俺は此処に居るからさ」
そう言ってエースが俺の背中をポンポンッとあやすから、俺はフッと心が軽くなって、何故かまた泣けた・・・
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