食堂編
サッチとのことがあって部屋に引き篭もってたけれどマルコは昼時になって食堂に向かった。

落ち込んでいても、普通にお腹が減る。
だがそれで後悔した・・・食堂では二番隊が食事していたから。


声が聞こえたのだ。


ゼハハハハハッ

聞いただけでマルコの背筋がザワリッと騒ぐ。
他の音という音が、それだけに支配されたような錯覚。
目の前が真っ赤に染まる・・・怒り、いやそんな生易しいものじゃない。

憎悪だ。

あぁ殺してしまいたいよい。

今、すぐに。

マルコの視界に映ったのは。
二番隊の隊長であるエースと、隣りに座るティーチ・・・

その光景が許せない、許すことなんて出来ない。感情が付いてゆかない。

エースの側で笑うな!!!
なんでオマエがエースの側で笑ってるんだよい、
エースを、オヤジを死へ追いやった者のくせに
なぜオマエがエースの側で・・・

胸が黒く熱い、感情の暴走で、マルコの腕が蒼く炎を纏って不死鳥に変幻する・・・


でもマルコの葛藤の間も二番隊の団欒は続いてゆく、ティーチ達が楽しげに談笑しながら食事している。

「このミートパイ死ぬほどウメェな!!」

ティーチの言葉と同時に、隣りのエースは眉をしかめて、

「このミートパイ死ぬほどマジィ!!」

そんなモビーディック号二番隊の決まりの光景・・・昔はよく見た光景・・・

昔?

否。

今、

見ている光景が

マルコには耐えられない。

エースを、オヤジをマリンフォードで喪った、あの場でティーチは『俺の時代だ!!』と笑った。

その声が耳から離れない。

それなのに同じ笑い声で、何故お前はエースの隣りにいるんだよい!!

そして、マルコがゆっくりと部屋に足を踏み入れると、食堂の空気が変わった。


マルコの抑えきれない殺気が周囲の仲間を圧倒する・・・


だがそんなマルコに声かけたのは、エースだった。

「おぅマルコ!!」

太陽のように笑う。

屈託無く。

気軽に他のクルー達には乗り越えられない壁を越えて、席を立ち、あっさりとマルコの肩にポンッと手を置く。

マルコは胸が熱くて堪らなくなった・・・

俺が、エースの笑顔に。

暖かさに。

どれだけ救われているか・・・

お前は知らないんだよい。

エース・・・

俺の大切な弟。


途端にマルコの周囲を圧倒していた気配が散じて、周囲にはホッとした空気が流れた。

だが次の瞬間にマルコはそのエースの手を掴むと、「悪いが借りるよい」と言って、食堂を後にしたのだった。

「ちょっマルコ!?」

突然、手をとられたエースの顔が紅いのに、クルー達は少し緊張した面持ちで見送った。

「エース隊長なにやらかしたんだ。」

誰かが口を開けば、

「マルコ隊長が部屋に入ったときチョー怖かった、あんなの初めて見た、ヤバイぜ。」

そう賛同する者も現われて、

「エース隊長、顔が真っ赤だったぜ。
・・・きっと相当な」

そうクルー達は見当違いな会話をしていた。

その中で、ただティーチだけが何かを考えるように、ミートパイを食べる手を止めていた。

もうすでに何かが動き出そうとしていることに、誰も気付かない・・・




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