淡々と次の島の上陸時の役割分担を捌いていくマルコにエースは、気ぜわしげな視線を送る・・・
マルコが泣いていたのを見た、エースですら、ついさっきのマルコが嘘の様に思う位、マルコは平然としていた。

・・・と、フッとこちらを見たマルコと視線が重なる。


ドクンッ


それだけで心臓が早鐘の様に動く。
エースは、視線を動かせなかった。

マルコが先に手元の書類へ視線を落とす。


エースの心臓はまだうるさい。




そして一通り今日の会議の内容が消化されると、マルコはおもむろに口を開いた。

「皆、急で悪いが。
隊を再編したいんだよい。」

真剣な蒼の瞳が隊長達に視線を投げかける。


「二番隊に居るティーチを俺の一番隊に」


この言葉がもたらす、本当の意味をまだ誰も知らなかった・・・


自分の酷く冷静な声が気持ちが悪い。

「隊を再編する。
ティーチを俺の隊に入れるよい。」

この時期にティーチは妖しい動きはしていないが、近くで監視した方が安心するよい。


しかもエースが飛び出した理由の一つは『ティーチが所属していた二番隊隊長の俺が始末をつける!!』だ。

エースとティーチを早めに切り離すに越したことは無いよい。




だが当然の如く、癖の強い隊長達は「急すぎる」と声をかけてきた。

元から、これくらいの反対は予想できている、

「俺がこなす仕事量が、きつくてねぃ。
悪いが古参の奴を一人、一番隊に欲しいんだよい。」

そう下手に出れば、普段の俺の仕事量を知っている大抵の隊長は口を紡ぐが・・・

「何で勝手なことをするんだ!!」

エースが射抜くような視線を俺に向けながらで、異議を唱えた。



エースはいつも真っ直ぐで、俺には眩しいよい。
俺の向かいの席から立ち上がって射抜くような視線を投げかけるエースに。
俺は笑う。

エースのこういう所が堪らなく好きだから。

するとエースの隣りの席のサッチが言葉をかけてきた。

「エースの言う通り、急すぎるぜマルコ。
ティーチは俺やマルコと並ぶ古株だ。
エースの世話に丁度良いって言ってたのはテメェじゃねぇか。」

そう確かに言った・・・隊長として経験が浅いエースの側に白髭海賊団古株のティーチが居れば、白髭の慣例とかも教えやすいだろうと思ったから。

俺は手を机の上で組んで、ため息を零す。

それはティーチが、サッチ・・・お前を殺して白髭海賊団を抜け出すなんて想ってなかったからだよい。
言える訳がない、未来の話・・・否、現実になどさせないよい。


本気だ。
本気でティーチを殺さなくちゃいけない。
それが難しいなら、あらゆる手を使って未来を変える。


「仲間殺し」の大罪を犯した俺がモビーに居られないことなど分かっているよい。
だから俺がいなくても大丈夫なようにエースは早くから一人で隊長職を鍛えたほうが良い。

そこで俺はわざと嘲りの笑みを浮かべた。

「反対意見は俺の仕事全部やってから言ってくれよい。」

それは不可能だ。

古参のクルーとして、一番隊隊長として、長く勤め上げている俺の仕事を正確に把握しているものは居ない。
それは同時に俺の代わりが誰も務まらないことを意味している。

「なんだと!マルコッ!!」


エースの怒りの瞳・・・想ったよりも辛い、胸が痛いよい。

マルコはエースの、その黒曜石の瞳を真っ直ぐに見返せなかった。


「ティーチは俺の隊に移動。これは周知のこととして頼むよい」


強引に、マルコは結論を言うと、席を立った・・・
残された者のことなど頓着しないようなふりをして・・・

マルコの書類が抱えられた右手が力が込められて、白くなっていたことに・・・誰も気付かなかった。




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