会議編
自慢のリーゼントを櫛で整えながら、彼は言った。

「えっ?マルコどした?」

エースはここで本当のことを言っても、マルコにとって具合が悪いだろうと言葉を少し捜す。会議室に集まっている隊長の面々がこっちに注目しているから変なことは言えない、さっきまでガヤガヤと騒いでいたのに、こういうことには団結力を見せるよなとエースは思った。

「ちょっと朝起きた時から調子が可笑しくてさ。
今、オヤジとそのことで人払いして二人で話してる。」

自分を褒めたいぐらいだとエースは思った。
パーフェクトじゃないか、嘘は全然交じってない。
少し嬉しげなエースに対して他の面々は顔を見合わせる。

「へぇ」

「ほぉ」

「珍しい」

変に興味を引いただけだったような気がした。

「じゃこれじゃ会議にならんし、ちょっと我等が一番隊隊長さんの見舞いに行きますか」

サッチーーーーー!!
しかも四番隊長のサッチがこんなこと言い出したからにはエースは幾分か過剰に反応してしまう、変な汗が出てきた。

「待てよ!オヤジがわざわざ人払いしてるんだぜ!」

そして焦りのあまり普段には見せない激しい反応を返してしまったエースである。
そんな年若い弟を見て。
エースなど幾らでも言いくるめられる歴戦の兵が勢ぞろいな白髭海賊団である。
サッチはニヤリと笑って。

「心配だから良いんだ」と至極まともに聞こえることを言う。
ブラメンコやラクヨウなんかは、すでに席を立っている。

「待てって!」

つい覇気を出してしまっても、その必死な弟を兄達は面白いように見ている。
勿論、白髭海賊団の隊長を務める者に、エースの覇気が覇王色であろうと倒れるような柔な者は居ない。

糸を張り詰めたかのような緊張・・・

でも、なんということは無い、ただこの弟を兄達が、からかっているだけなのだが弟本人だけが気付いていない。

「本気で止めるぞっ」

エースが真剣になればなる程に、一癖も二癖もある兄達は喜んでいる。
するとサッチがうんうんと頷いて指をエースの鼻先に立てた、

「何だよ」

歯を見せてニッコリと笑う笑顔が怪しい。

「じゃあ腕相撲でもして、お見舞いするかしないか決めようぜ」

ただ単にエースをからかいたいだけである。
それにあっさりとエースは「おぅっ」と返事した。

彼は後ろに守るべき者が居る時、決して引かない・・・




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