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漆黒のシャツとズボンを着て、甲板に出る。
明かりをつけないで薄暗かった自室とは違ってモビーディック号の甲板は明るい。
明るい太陽と、海の潮騒。
モビーはマリンフォードで喪われた筈の「愛しい家」だ。
そこでマルコは胸一杯に海の香りのする空気を吸い込んだ。
これが夢でないと実感するために。
「あっマルコ隊長!おはようございます!」
そんなマルコに、朝から忙しなく働いているクルー達が声をかけてきた。
マルコは息をヒュッと飲み込む。
「ボレロ…」
「はいっ!」
元気に返事してくるのは頂上決戦で死んでしまった仲間・・・懐かしい顔だった。
「…良い朝だよい」
嬉しいことが続いて胸が痛くなるぐらいに。
マルコがそうクルーに言葉を返すと、彼は二カッと笑う。
そしてそんな彼に別の場所から、言葉がかけられた。
「おぃマルコ、マルコが居ないとミーティング始まんねぇぞ」
先に部屋から出ていたエースがマストにもたてかかって立っていた。
マルコからは少し逆光で眩しくエースの顔は見えない。
そんな些細なことに不安を感じるぐらいマルコは今、精神的に不安定だ。
だがそれを表面に出すことは無く、白ヒゲ海賊団の隊長たち皆が一番隊長が居なくては纏まらない癖の強い者達だと知っているマルコは頷いた。
「あぁ、、分かってるよい」
でも何より、一番。
一番に。
マルコは苦しみを耐えるように言葉を紡いだ。
「オヤジに逢ってからでいいだろい?」
どことなく漂うマルコの必死な雰囲気にエースは飲まれた。
エースが言葉を返す前にマルコは性急に歩き出す。
何時もと変わらない日常の筈だ。
それなのにマルコは今日どことなく可笑しい。
疑問に想うもののエースには理由が分からず、幾分か早足でオヤジの元へ向かうマルコの後ろを何とはなしに着いて行った。
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