エースに会って涙が暫らく止まらなくて、マルコは自分が不思議でならなかった。
自分はこんなに感情を抑えられない人間だっただろうか。

けれど…エースに触れて体温を感じ、その現実感に救われた。

エースは戸惑っているが、ベッドの端に座って俺が落ち着くのを待ってくれている。
それが嬉しいと、想う。


この瞬間、エースが生きてる。


当たり前の現実を、享受する。


家族で末の弟を、俺は・・・守れなかったのに…エースは優しい。


静かにエースに手を伸ばして、その癖ッ毛を撫でても、エースはそんな俺の行動を許してくれた。
漆黒の瞳に自分が映っている。


エースが生きてる。

体温があって、呼吸して、声を出して、表情を変える。

生きてる。



そして今日はいつだと問えば、エースは不思議な顔をして、マリンフォード決戦の三年前の日時を答えた。

この夢のような幸福が恐ろしいけれど。
ひどく冷静に「過去」に来たことを理解している自分が居た。
マルコの鋭敏な感覚や勘、全てが現実と訴えている。

これが甘い夢だとしたら発狂しそうだ。
酷くリアルな夢もあるから万が一ということもあるけれど…唇を噛みしめる。
痛みはあった。

そこでマルコは夜着にしていた蒼のガウンを脱いだ。

「すぐに行くよい」

覚悟は決まってる。

ティーチを殺す。
たとえ仲間殺しの汚名を着る結果になったとしても。
止めなければいけない。

マルコの蒼の瞳には哀しい程に決意の色が滲んでいた。




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