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『恋をするたび、』
櫻が舞っていた。
桜吹雪のその中で、風がエースの頬をなでる。
彼の髪がサラリッと流れる。
エースは満開の笑顔だった。
そして彼の視界の下には櫻の海が広がっていた・・・
薄紅の儚げな・・・とても美しい海。
「マルコッ!!スゲーーッ!!!」
エースは声を上げずにはおれなかった。
すると直ぐ、はしゃぐエースに声がかかる。
「あまり動くな、落ちるよい」
その声は、
エースが乗っている青い炎をまとう鳥・・・不死鳥から響く。
幻想的な炎の不死鳥。
マルコが不死鳥に変幻してエースを背に乗せているのだ。
エースは視界を覆うような櫻吹雪を指差しながら言った。
「櫻が海みたいに何処までも広がっているぜ!!」
エースが指さすように島一面の櫻が広がり、その中を縫うように飛んでいると、薄紅の海の中を、たゆたっている様だった。
それにマルコは不死鳥のまま、ふんわりと笑う、
マリンフォードでエースを亡くす前、エースに背に乗せてくれと言われて以前の俺ははぐらかして断った。
『なぁ乗せてくれよ、マルコ』
『なんで大の男を乗せて飛ばなきゃいけないんだよい。お前は炎なんだから変幻して跳べよい』
『それは飛ぶっていわねぇよ!』
なんて残酷なことを俺はしたんだ。
だが、今は違う・・・そうエースを背に乗せて想うのだ。
エースが楽しいと俺も嬉しい・・・
「楽しいかよい?」
と聞くとエースはこちらが幸せになる笑みを顔一杯に浮かべる。
「あぁ!マルコと一緒だから!楽しい!!」
それにマルコも微笑む。
じんわりと幸福感が胸を暖かくさせた。
桜舞い散る、
ひとひら、はらはらと。
美しい、その光景の中で。
不意にエースが言った。
あぁ、俺、幸せだなぁ。
それは俺の言葉だよい。
幸せなのだ。
ごくごく当たり前に幸せで、どうしようもなくて。
それを自然にくれる君が大切で、愛おしくて、たまんなくて。
君に恋してるのだ。
END
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