◎答え合わせ 小春side


「おはよう!」そう声を掛けてくれる友達に返事をしながら、私は学校へ1人で入る。


「小春!」
「あ、心結おはよう」


靴を履き替えて顔を上げると、心結が仁王立ちしていた。


「おはよう!って、これどういうことよう!昨日まさからいきなり言われたからびっくりしたよ」
「ごめんごめん」
「ううん、それはいいんだけどさ」


心結が言っているのは、赤也くんと仁王くんと心結と私の4人で遊びに行くことについて、だ。昨日たまたま部活が休みで話すことができなかったのもあり、心結はこうして朝一で来たんだと思われる。


「で、真相はいかに?」
「うん。一昨日のことなんだけど…」





携帯が振動する音がして、私はテレビから目線を外して手に取る。差出人は赤也くん。合宿が終わってから、ちょくちょく連絡を取るようになっていた。メールをしていて気づいたんだけど、返事は意外にも遅かった。聞いてみると、ゲームが出来ればいいんす、と何とも赤也くんらしいと言うか男子高校生らしい理由が返ってきたこともあったり。


「えっ」


何気ない会話の後に、『今度遊べないっすか?』の一言。私はびっくりして「2人で?」なんて返してしまって。今思えば、少し失礼だったかなとも思う。

ぶぶぶ…。

心無しかいつもより早く来た返事を見ると、『仁王先輩と心結さんも誘って、4人でどうですか?』と来ていた。
心結が一緒ならと思った私は、簡単にOKを出してしまって。その後赤也くんから、心結には仁王くんに聞いてもらうという内容のメールを見て初めて、心結に聞くのを忘れていたことを思い出した。




「…という感じでした」
「ふうーん、赤也くんから誘われたのね」
「そうなるかな…。心結はもう返事した?」

「ううん、まだしてないよ。昨日まさに、『どういうこと?』ってメールしても返ってこないし、電話も出ないだろうしで面倒くさいから小春に聞いてからでもいいかなって。…ま、まさが私のことわざわざ誘う訳ないから、話聞いて納得ですな」
「え、そうなの?」
「うん。神奈川のいとこの家に行ってまさに会っても、最近じゃ家に誘われたりする事すらないし」


「まさも男の子だから仕方ないってーか、なんていうか。」心結はそう言って笑った。でも、仁王くんが心結を誘ったりしないのはやっぱり意外だなぁ。


「あ、じゃあまさにはOKって送っておくね」
「本当?良かった!私、テニス部のみんな以外の男の子と遊びに行くの初めてだから、不安で」
「それは確かにそうだよね。…って、私も同じようなものだけど」
「あ…」


心結は高校1年生のときに、本当に短い期間だけ彼氏がいたときがある。告白されて1ヶ月も付き合っていただろうか…でもそれは、男の子のお父さんの海外出張が決まり、家族みんなで着いていくということになってしまったために別れることになった。
氷帝では、親が社長や大企業で働いてる人も少なくないから、私も友達がそうなったこともある。心結が別れてしばらく経ってから、付き合った期間が短くて良かったと言っていたのを私は覚えている。


「ま、お互い頑張ろう!」
「えー何をよー」
「恋、部活、勉強!青春しようじゃないの!」
「ふふ、でももう高3だよ?」
「それを言われると…辛い…」


がっくしと肩を落とす心結。でも、自分で言っておいて変だけど、本当にそうだなぁ。もう高3、楽しんでばっかりいられる歳じゃないのかなぁ。


「小春のクラス、到着でーす!」
「はーい」
「じゃあ、私はクラスに戻るね!」
「うん!予定わかったらまた教えるね!」
「よろしくー!」


心結が背を向けたのを確認して、私も教室に入る。カバンから筆記用具やノートを出し、机にしまおうと机に手を入れると、景吾から借りた英和辞典が出てきた。
うーん…景吾のクラスで今日もしかしたら使うかもしれないし、今のうちに返しに行っちゃった方がいいか!私はそう思って、辞典を持って景吾のクラスへと向かった。





「景吾、まだ来てないかな?」
「うーん、カバンとかはないけど、生徒会室にいるみたいだよ」
「生徒会室?」


この前も生徒会室に行ってたなぁ、景吾。近い行事と言っても、かなり盛り上がる体育祭は9月だし、むしろそれすら部活が終わってからだしね。


「はっきりわからないし、渡しておこっか?」
「あ、ううん。生徒会室に行ってみる!」


友達に「ありがとう。」と告げて、私は生徒会室に向かおうと歩き出す。

もしかしたら、私達にはわからないところで何かやることがあるのかもしれないし、私が手伝えればそれが一番いいよね。私に出来ることだったらいいんだけど…。



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