◎ゆらゆらゆら 心結side


「うーん…」

私の目線の先には、朝からせっせとマネージャーの仕事をこなす小春の姿が。なんだろう…なんか、違和感があるんだよなぁ。
1週間に1回、晴れている日を選んで朝から洗濯をしている私達。小春は洗濯を干しているはずの私の目線に気づくと、笑って小さく手を振った。


「なんだかなー」
「おら、ちゃんと仕事しろー」
「ひっ!…なんだ宍戸か」
「はは、今日も洗濯物はよく乾きそうだな」
「うん、そうだね!」


私がそう言うと、宍戸は急に真剣な顔になった。


「なんかあったのか?」
「え?」
「最近、小春のこと見ては変な顔してね?」


ま、違ったらいいんだけどよ。
宍戸の言葉に、1人さり気なく見ていたつもりの私は少し驚いた。


「うんと…なんか、最近小春が変な気がして」
「小春が?」
「どこがってはわからないんだけど、合宿の後くらいから何となーく」
「そう、か?」
「宍戸はそう思わない?」
「俺は思わねーけど…でも、心結が思うならそうなんじゃねーか?男にはわかんねーことも、女友達にはわかることあるだろ」

「それはあるかもしれないけど…」
「そんなに気にしてるなら、聞いてみればいいんじゃねえの」
「……」


きっと、聞いても小春は言わないだろう。少しだけど秘密主義のところがあるから。ただ、問題はそれを溜め込んでしまわないか。小春は人に頼るというのをあまりしたがらない子で、私にもあんまり頼ろうとしない。…でも。


「ううん、まだ聞かない」


小春が言わないなら、私はいつも通りにしたい。小春が言わないのは、私にそれを望んでいるからだと思うし、小春は私よりもずっとうまく考えて行動出来る子なのは間違いないから。


「いいのか?」
「きっと、大丈夫だと思う…」
「ま、心結がいいなら俺はいいけどな」
「うん!…あーでも、なんかすっきりした!宍戸、聞いてくれてありがとうね」
「ああ」

「じゃ、私はせっせと洗濯干そうかね!」
「ん。俺は先、教室行ってるわ」


私がそう言うと、宍戸は着替えるために部室へ向かっていった。

でも、私はこの時に気づいた方が良かったんだ。小春の違和感にも、跡部の違和感にも。





「疲れたー!」

更衣室に入るなり、友達が叫んだ。今日は体育祭の練習を兼ねて、忍足のクラスと合同体育だった。


「あー、忍足くん今日もかっこよかったねー」
「本当お!足速いしイケメンだし、リレーに絶対選ばれて欲しいなぁ」


リレーにイケメン関係ある?きゃあきゃあと話す友達と、無駄に冷静な私。確かに今日は一緒に外での体育だったから目線が集まっていたのはわかっていたけど…。


「忍足ってそんなかっこいいのかねー」


私がそう呟くと、友達は一斉に私の方を見る。そして顔には、揃いも揃って有り得ないの字が。


「心結!贅沢なこと言わない!」
「顔もだけど、忍足くんは中身もいいじゃん!」
「そうそう、優しい!そして賢い!」
「はぁ。私も飽きるほどイケメンの顔を見ていたいよ…」


そこから忍足の良さについての語りが始まってしまった。確かに彼女はいないし、周りに気も使えるし、頭もいいし…こうやって考えると、なかなかのハイスペックさんな忍足。おかげで女子の中では人気が高いのも事実。


「むしろ、心結にとっては誰がかっこいいの?」
「そうだよね。テニス部でもぶっちぎりで人気ある跡部様と忍足くんのこと何とも思わないなんて」
「え、え?」
「確かに!心結は氷帝でどういう人がかっこいいに当てはまるの?バスケ部の進藤くん?サッカー部の松田くん?」


おっと。どうして私にいきなり興味が…。友達の楽しそうな目に、困惑してしまう。進藤くんも松田くんも、イケメンだけどなぁ。そんなこと言ったら、忍足もイケメンだとは思うし。かっこいい、かっこいい…。


「宍戸、とか?」

「ええ!」「ええ!」「ええ!」


みんなの大きい声が重なってそりゃあもう大音量に。それが私に向かっているもんだから、私は思わず肩を揺らしてしまう。
さっき、忍足とリレーの練習をしていた宍戸を思い出す。反射神経のいい宍戸は第1走者で、他の人より群を抜いて出だしが速かったことを考えていると…。


「あの、氷帝はってことだよ!」
「じゃあ他にはもっとかっこいい人がいるんだ?」


友達と楽しそうに練習する宍戸が、頭から離れなくなっていた。


「そっか、心結はそっちかー」
「でも、宍戸くんいいと思う!何気に優しいし」
「だからー、そんなんじゃなくて!」
「あれ心結、なんか携帯光ってるよ」
「んー?」


「はいっ。」メールに気づいた友達から携帯を受け取る。差し出し人は…まさ?いつもは、部活があるから部活が終わるまで滅多に返事すらくれないのに…。
尚更不思議に思ってメールを開くと。


『来週末、赤也と小春ちゃんと心結と俺と、4人で遊ばん?』



「えっ」


気持ちの揺らぎは、なかなか止まらないみたいです…。



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