◎ドリンク作り 小春side



「ふー、お腹いっぱい!」


朝食を食べ終えて、満足そうな心結と2人会場を後にする。


「みんなと一緒に食べれなかったのが残念だったね」
「そうだよね。2人で食べるのも楽しかったけど…」


マネージャーの仕事をするために、いつもよりも早めに朝食を済ませた私達。昨日までの朝食を思い返して、みんなの声を聞きながら食べられたらなぁ…と思ってしまう。


「ま、でも仕方ないね!お昼ご飯に期待期待!」
「ふふ、うん!そうしよう!」

「そしたら今日の仕事はどうする?洗濯とドリンクと」
「んーと…昨日心結がドリンク作ってくれたから、私が今日は作ろうかな」
「OK、じゃあそれでいこう!……あ、忍足と宍戸だ」
「今日は2人もご飯早いね」
「確かに!」


角を曲がると見えた忍足と宍戸に、心結は「おはよー!」と言って手を振った。声に気づいた2人もこちらに手を振り返す。


「おはようさん。今日はご飯早いんやな」
「うん、準備と片付けとあるからね」
「それもそうやんなぁ…。あ、だから心結は朝来なかったん?」
「そうそう」
「心結のことだから寝坊したんだろうなって話してたんだけどな」
「まぁ!失礼しちゃう!」


宍戸に対して、心結がイーッと言って睨む。それが可笑しくて、私達はみんなで笑った。その後、忍足が私に向かって来い来いと手を振るから、私が耳を近づけると…。

「宍戸、目に見えて落ち込んでてん」

私と忍足は、2人顔を合わせて笑った。当の本人である宍戸と心結は、頭にハテナマークを浮かべて私達を見ていた。





「さーて、ドリンク作りますか!」


心結は洗濯をしていて今はいないから、自分自身を鼓舞するように声を発する。よし、今日は最終日だからスペシャルドリンクにしようかな!そう思いながら粉の準備をしていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。


「あ、赤也くん!おはよう」
「おはようございます!」
「本当に来たんだー?」
「当たり前じゃないすか!」


昨日の夜赤也くんから、ドリンク作りを教えて欲しいとメールが来ていたことを思い出す。でも、なんで赤也くんがドリンクなんだろう…?


「どうしてそうなったの?」
「それが聞いて下さいよ!初日にちょっと遅刻したからって、合宿終わってからの3日間1年と一緒にドリンク作れって幸村部長が…酷くないっすか?」
「そうだったの?…ふふ、幸村くんもそんなこと言うんだね」
「笑顔で言ってくるっすからね。ま、真田副部長からビンタされないだけマシっすけど」
「うわー、立海は大変だね」
「王者は大変なんすよ…なんてね」


赤也くんは、そう言って照れたように笑った。赤也くんの笑顔が可愛くて、私も釣られて笑ってしまう。


「と、いうのは置いておいて」
「あ、はいはい」
「小春さんの作るドリンクがすげー美味かったんすよ!」
「ふふっ、本当?嬉しいなぁ」
「それで、ドリンクの作り方とかなんかあるのかなーと思いまして」

「あ、そしたら今日は私と心結特製のドリンクを作ろうと思ってるから、それを赤也くんに伝授しましょう!」
「え!そんなんあるんすかー!すげー!」
「そうでしょ?心結と2人で一生懸命試行錯誤したんだ」
「…素敵なマネージャーさんすね」
「そ、そんなことないよ!色々試してるうちに自分達が一番楽しくなるってよく言うでしょ?そんな感じ」


そんなことを話しながら、時計を見る。練習開始まであと30分か…。


「じゃあ、作り方教えるね!」
「はい!」





「最後に蓋を閉めて…完成ー!」


私がそう言いながら拍手をすると、一緒になって拍手をしてくれる赤也くん。赤也くんが手伝ってくれたおかげで、随分と早く、そして楽に終えることができた。


「いつもこんなことやってたんすね…。4日間、ありがとうございます」
「ううん、私達はそれが仕事だからね。でも、そう言って貰えるとすごく嬉しい!こちらこそありがとう」
「へへっ。…あ、そう言えば、小春さんにあげようと思って持ってきたんすこれ!」


そう言って赤也くんがジャージのポケットに手を入れた。なんだろう…?


「え…」
「ガム、結構小春さん噛んでません?ホテルの売店で色んなの売ってたんで、丸井先輩からオススメなの聞いて」


差し出されたのは、私がいつも買っているガムの新発売のものだった。今食べているものが無くなったら買ってみようと思っていたもので、赤也くんがブン太くんに聞いた通り、人気の商品だった。


「ありがとう!これ、私がいつも買ってるメーカーの新商品なの!」
「えっ、そうなんすか?すげー偶然っす!俺、さすがに何のメーカーの食べてるのかまではわかって無かったっすよ」


「そこまでストーカーじゃないっすから!」と慌てて弁解する赤也くん。そこまでは思ってないのに、赤也くんって面白いなぁ。


「ふふ、そんなことは全然思ってないけど…本当に私貰ってもいいの?」
「もちろんっす、ドリンク教えてもらったお礼です」
「うん、ありがとう!」


教えたって言っても、本当なら口で説明するだけで充分なものなのに、作るのを手伝ってもらって逆に私の方が感謝しているくらい。それじゃあと言って私もポケットからいつものガムを取り出した。


「私のいつものガム、赤也くんにあげるね。口に合うといいんだけど」
「えっ、いいんすか?」
「もちろん!最終日、一緒に頑張ろうね」
「はい!…ありがとう、ございます」


わざわざ頭を下げてお礼を言ってくれる赤也くんは、とても礼儀正しくて。こんなガム1つなのにとむしろこっちが申し訳なくなる。


「あ、最後に、このドリンクさん達はどこに持っていくんすか?」
「んーと、今日は試合だからコートの中かな」
「それなら俺持って行くっすね!」
「えっそんな!悪いよ!」
「まーま、力仕事は男の仕事っすから」


そう言って軽々と2つのタンクを持ち上げる赤也くん。私なんて、1つ持つのもやっとなのに…。そんなに腕は太くないと思っていたけど、毎日名門校での練習をしているだけあるってことだよね。
赤也くんのボトルを持つ筋張った腕が男らしくて、私は急に鼓動が早くなったような気がした。



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