◎宣戦布告? 心結side


小春達が飲み物を買いに行き、残された私達はトランプをまとめていた。


「跡部奢ってくれるのかなぁ」
「んー、どうだろうなー」
「あ、そういえばお菓子持ってきたんだった!」
「昨日買ったやつ?」
「岳人、昨日めっちゃ買い込んでたもんな」
「せっかくだし取りにいこー?」
「おう!」


椅子から勢い良く立ち上がる岳人とジロー。それに続いて忍足も腰を上げた。


「なら、俺は2人について行くわ。宍戸はここに居ったってな」
「…は?ちょ、おい」
「じゃ行ってくんなー、留守番よろしくぅ」
「行ってらっしゃい!」


3人が出ていって、残されたのは私と宍戸の2人。今まであんなに騒いでたのに、なんだか寂しいなぁ。


「みんな早く帰ってくるといいね」
「おう」
「てか、宍戸はお菓子買ってないんだ?」
「おう」
「…さっきから宍戸、おうおうしか言ってない」
「…おう」
「ほらまた言ったー!」


宍戸、私といても楽しくないのかなぁ。さっきまではあんなに楽しそうだったのに。
いきなり態度の違う宍戸に、今までは気にしたことなかったけど、ふとそんな事を思ってしまう。


「そういうわけじゃねーけど…」
「いいもーん」
「だから、」


宍戸がそこまで言いかけたとき、ドアをコンコンと叩く音がした。


「あっ、小春達かな?」
「んーそれにしては早くねーか?」
「それは言えてるかも。…とりあえず出てみるね」
「…いや、心あたりがないなら俺が出た方がいいだろ」


ドアへ歩いて行こうとするあたしを止めて、代わりに宍戸はドアに歩いて行く。宍戸に言われた言葉がもやもやと心に広がる。変な人だったらどうしよう…。嫌なことばかりが頭をよぎる。


「ね、ちょっと宍 」
「仁王、か?」
「…何でお前さんがここにいるんじゃ」


宍戸の肩の向こうに見えた顔は、一見澄ましているように見えるのに声がどこか不機嫌そうで。そう。ノックをしたのはどうやらまさだったみたい。


「まさじゃん!なんだ、もっと早く言ってよねー」
「そう言っても、早く出なかったんはそっちじゃろ」
「ごめんごめん。今みんないないから変に気使っちゃって。でも、わざわざ部屋まで来てどうしたの?」


あたしがそう言うと、「ああっ」と思い出したような顔をするまさ。


「絆創膏あるか?丸井が紙で指切ってのう」
「え、そうなの?ちょっと待っててすぐ持ってくる!」





「宍戸、2人でトランプやってたんか?」


心結には何も言わずに部屋に上がった仁王は、そのままにしてあったトランプを一枚取ると、宍戸に聞く。


「まさか。跡部とか岳人とかもいたぜ」
「ふーん。なんで2人なん?」
「跡部と小春は飲み物買いに行って、岳人達はお菓子持ってくるって言って出てったんだよ」
「へえ」
「……」


仁王は宍戸の顔を一度見てからすぐに目を逸らす。トランプを元の場所に戻すと、何か考えるような顔をしたのだった。





「あったあった!ってええ!部屋に入ってるし!」
「お、あったんか」
「うん、どうぞ」


そう言って差し出されたまさの手のひらに絆創膏をを乗せる。「ありがとう」、そうまさが呟くように言ったのが聞こえた。


「それじゃ、そろそろブン太くんが可哀想だから帰るかのう」
「そうだよ、じゃあまた明日ね!」
「おー。‥宍戸、負けんぜよ」
「…どういう意味だよ?」
「そのままの意味じゃ。それじゃあの」

「えーなになに?明日からの練習前から、既にバチバチ言ってる感じ?」
「そういうこと。じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみー!」
「……」



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