◎一緒におつかい 小春side


「景吾、こっちだよこっち!」
「アーン?‥小春には悪いが…」


そう言うと景吾は、私が指差した方と逆の方のカードに手をかける。


「あっ」
「俺様の上がりだ」
「やっと終わったー!」
「クソクソ!長すぎだぜ!」
「それにしても、跡部ってほんまにばばぬき弱いんやな」
「ポーカーとかなら強いのにな」
「お前ら好き勝手言いやがって…」

「まーま、とりあえず下から1位2位の小春と跡部は飲み物買いに行ってよー」
「あ、そっか」


そういえば、そういう主旨だったっけ。トランプをしていて、ジローが喉が渇いたということで始まったばばぬき。負けた人が1階にある自動販売機まで行って買ってくるという賭けをしていたんだった。

「チッ、しょうがねーな。全員飲みたいものを紙に書け」


そう言って景吾が渡した紙に、それぞれが飲みたいものを書いていく。


「これでいいんだな?それじゃあ小春、行くぞ」
「うん!」


私たちがドアまで歩いていくと、後ろから心結が

「跡部の奢りね!」

そう言ったのが聞こえた。





「なんかごめんね?景吾、せっかく勝ったのに」
「アーン?それは最初から決まってたことだろうが」
「まぁ、それもそうだけど…」


私たちの部屋はエレベーターからそう遠くなくて、少し話しているとすぐにエレベーターにたどり着いた。景吾がボタンを押すと、エレベーターはまだ少し上の方にあるみたいで、私たちはそこで立ち止まった。


「それより」
「ん?」
「んなにごめんごめん謝んじゃねえ。いちいち謝るような事じゃねえだろ」
「そう…かな」


呆れたような顔で景吾は言った。でも、確かに今日のあたしは謝ってばっかりだった気がする。車酔いで謝って、心配してくれたみんなに謝って、今もまた景吾に謝っている。


「そうだね。ごめ… 」
「あっ、小春さんだ!」


1階につく前にエレベーターが開き、そこに立っていたのは赤也くんだった。私の名前を言って、赤也くんは何故か笑顔になった。


「跡部さんもお疲れっす。2人で何処か行くんすか?」
「うん、トランプで負けたからジュース買ってこいって頼まれちゃって」
「え!俺もジュース買ってこいって言われたんすよ!…ま、俺の場合は無条件ですけど」

「あ、今日遅刻しちゃったから?」
「なっ何で知ってんすか?」
「ふふ、仁王くんが言ってたよ」
「仁王先輩め…」


そう言って眉をひそめる赤也くん。嬉しそうだったり、こんな顔をしてみたり。表情がくるくる変わる赤也くんだから、きっと先輩のみんなも可愛がってるんだろうなぁ。


「あーあの、小春さんってぶっちゃけ…」
「…ぶっちゃけ?」
「……」
「……」


「…っあー、やっぱいいっす!今の発言ナシで!」

「えー!」


なんだろうなんだろう!赤也くんのあの顔からいって、結構深刻そうなぶっちゃけだったと私は見るぞ。私はじぃーっと赤也くんの顔を見つめる。


「おい、もうすぐ着くぞ」
「あ、うん」


景吾に声をかけられて顔を上げると、すぐにエレベーターがついたのを告げる音が聞こえた。目的の階に着いたことで、私はさっきの疑問はすっかり忘れてしまった。


「小春、さっきメモした紙あるか」
「あるよ、はい」


自動販売機前に着いた私達は、それぞれの欲しかった飲み物を買っていく。がこん、がこん。景吾はジュースとかはあまり飲まないから、よくわかっている私がボタンを押して、景吾は出てきたジュースをポケットから取り出していく。


「これで全部か?」
「うん。でも、本当に景吾の奢りでいいの?」
「ああ、これくらいは奢ってやる」
「えへへ、ありがとう!」


私はそう言って、景吾の腕からいくつかジュースを受け取る。缶は手でも触れると冷たくて、気持ちいいを通り越して寒いような…。


「うっひょー、冷た!」


声の方を振り返ると、買ったばかりの沢山の缶ジュースを腕に抱えて顔をひきつらせる赤也くんがいた。


「赤也くん寒そう、私も少し持つよ!」
「えっ、でも、小春さんもう結構持ってるし大丈夫っすよ」
「いいから、ね?」
「…スイマセン」


お願いします。そう言う赤也くんからもジュースを受け取って、結局私も腕に抱える事になった。ううう、なかなかに寒い。…でもっ。


「大丈夫か?」
「うん、大丈夫!…ふふっ」
「どうしたんすか?」
「ううん!3人でこうやってジュース持ってくのってなんか楽しいなと思って」


景吾と赤也くんの顔を見ながらそういう私を、2人はきょとんとした顔で見ていて。私はなんだか恥ずかしくなって、1人足早にエレベーターへ向かったんだ。


「……」
「……」



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