×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



  27


ニナの情報と、赤髪の情報と両方を耳にした俺は賭けに出た。
普段であれば敵であり、俺がいつか首を狙う赤髪に共闘を持ちかけるのは、賭けだ。ニナのことである以上乗るであろう8割と、簪の件が俺であることを知っていてニナとの距離を着々と詰めていることに嫉妬が少なからず湧いてしまえば断られる2割。
案の定、理性的な時の赤髪は前者であったことがよかった。黒ひげの能力は厄介。それはあの戦争で俺が目にした事実であり、これから直面する難問だ。

「ロー…?…なんで」
「赤髪に策を持ち込んだのは俺だ。もう少し黒ひげの様子を見るぞ」
「ロー、赤髪…ありがと、…」
「いいんだ。無事でよかった」

赤髪の腕の中にいるのは少々腹の虫が収まらねェところはあるが、とにかく大きな外傷もなく俺たちのもとへ帰ってきたは、ニナは少し話をすると安心したようにそのまま気を失ってしまった。

「…とにかく出航するぞ。黒ひげが追ってくることはなさそうだが…海軍が大将を引き連れてくる可能性が高い」
「そうだな。じゃァ、ニナは貰ってく」
「待て。これは1人の医者として言うが、ここは俺に預けろ。…目を覚ましたら、能力で会わせに行く。」

手を組むことを持ちかけた俺が、ここで変に嘘はついたりしねェよ、と目を鋭くした赤髪に付け足すと、不服そうではあったものの、ニナの顔をしばらく見つめてから俺に託してきた。「何かしたら分かってるだろうな」なんて脅しを加えて。

赤髪の船と横並びに付けながら、ポーラタンク号は出航し、俺の傍でニナは眠っている。こんなに時間が長く感じたのは、いつ以来だろうか。
ニナの目覚めを待ちながら、ただ静かに、その愛しい寝顔を見つめていた。






「……」

目を覚ますと、ユラユラと体が揺れている感じ。船に乗っているんだと分かった。しばらく白い天井をぼーっと見つめていると、視界に見覚えのある帽子が目に入った。

「ロー」
「…よォ。お目覚めか」
「……ごめんなさい、迷惑かけたわ」
「あァ。まったくだ」

すっぱりと頷かれ、う、と返事に固まる。そんな…いや迷惑かけたけれど…罪悪感に押しつぶされてしまう。
そう唸っていると頬をするりと撫でられた。頭にはてなを浮かべながらローを見ると、あまりに優しい瞳がこちらを見つめていたものだから、ぐ、と息を詰まらせた。

「俺の傍にいれば護ってやるんだがな」

まァ、護られてばかりは性にあわないんだろうが
なんて、意地悪な笑みを浮かべるローは、とてもいつも通りで、不思議と安心してしまった。

今私はローの船に乗っていて、黒ひげに縛られていた手足には、縄と錠の跡が残っているけれど他に大きな怪我はなく、数刻眠っていただけのようだ。
ローからあの時のことを一通り聞いて、隣に今赤髪の船もいることを知った私はお礼を言いに行く、と申し出た。

「…………」
「…嫌そうな顔」
「まァ……俺も会わせるとは言っちまってるし仕方ねェ」

腰に手を回されて、ベッドから起き上がる。そこまでしなくても大丈夫、といいたかったが、足がどうも震えてしまい上手く歩けなかった。大人しくローの腕に捕まらせて貰う。

「…クソ。このまま逃げりゃよかった」
「?」
「……お前を独占したい」
「馬鹿言ってないで」

「本気だ、俺は」

じ、と私を見下ろす金の瞳は真っ直ぐで、冗談ではないことも分かっている。…分かっている。それでもその気持ちに応えていいのかわからない私は、まだ目を逸らすことしか出来ないのだ。
頬に暖かく柔らかい感触があり、頬にキスされたと思った。熱くなった顔をローに向けると、そんな私の迷いすらも分かったような優しい笑みを浮かべるものだから、私はまた顔を逸らした。





「ニナーーー!!」
「っちょ、赤髪!離れてッ」
「ひでェ…俺がニナのこと助けたんだぞ?」
「逃げられたのはそこのルーキーの能力だろ」
「黙ってろベン!」

赤髪の船に行くやいなや、待ち構えていたかのように赤髪に抱きしめられる。(とにかく苦しい。あと髭が痛い…)

「ニナ。やっぱり俺の船に乗れよ」
「いい。私は海兵だから」
「俺の方が…」
「いい。」
「……そういうと思ってたけどよォ」

ガッカリ、と肩をあからさまに落とす赤髪に思わずふっと笑ってしまった。
肩口にぐりぐりと額を押し付けながら私を抱きしめて離さない赤髪。珍しくお酒の匂いがしないから、今日は飲んでないんだろう。

「あー…今すぐにでも抱き潰したい」
「ッは…!?」

そんな言葉が思わず飛んできてぼっと顔が熱くなる。何を言い出すんだこの男は!
そのまま首筋に暖かい感触が数回したときだった。いつの間にか私はローの隣に戻って肩を引き寄せられていて、赤髪の腕の中には彼のクルーであるラッキールゥが。2人でぎゃーーー!と叫び声を上げたところ、ローを見上げるとべっと舌を赤髪に向かって出していたものだから、私も思わず笑った。

そんなやり取りがあってから、ローは赤髪を見据えて私を海軍本部へ送り届けることを伝えた。

「俺が行ってもいいぞ」
「馬鹿言え。四皇が急に現れたらあっちがバタつくだろうが。七武海の俺が送った方がまだ自然だ」
「…お頭。」
「睨むな、ベン。…このままニナを連れて行きたい気持ちは山ほどあるが… ニナに嫌われたくないしな」
「俺は青キジやセンゴクたちに話もある」

そんなやり取りをわたしはキョロキョロしながら見つめていた。ローが青キジさんちに話したいこと…って何だろう。というか、律儀に送ってくれるあたり、…なんとも、複雑だけど私のことを考えてくれているんだなと思わされて、もやもや。

「なら俺の書状も持って行ってくれ」
「わかった」

赤髪からの書状を受け取り、私たちはローの船に戻ることになった。
とにかく今回はお世話になり過ぎた。と、もう一度赤髪にお礼を言おうとと近づくと、赤髪は私の頬をすくい上げる。

「ニナ、何かあれば呼べよ。すぐに行く。」
「すぐ、なんて無茶なことを言うわね」
「無茶じゃねェさ!お前のためだ」
「ふふ…そう。ありがとう」

そういうと、私を見つめていた赤髪が、はあとため息をついてからゴチンと額をぶつけてきた。痛みはないが衝撃に目を瞑ってしまう。

「、ッ」

その時、ふわりと優しく重ねられた唇。静かに離れると私の目の前で口角をにっとあげて「礼はこれでいい」と、いう赤髪。離れ際にもう一度頬を指の腹で撫でられ、擽ったく感じた。

すると不機嫌MAXという顔のローが後ろから私の体を赤髪から引き離した。赤髪を睨みつけながらローの口が開いたのが分かったから、きっともう船に戻るんだろうと直感する。「シャンブルズ」とローが言う前に、私は最後にもう一度、赤髪にお礼言った。







「…おーい、お頭ー」
「無駄だ無駄。今は多分俺たちの声なんかぜーんぜん届かねェよ」

ニナがルーキーのトラファルガーと共に去っていった場所にお頭は立ち尽くしている。しかもあのお頭が、真っ赤な顔して。頭を抱えてその場にへろへろと座り込んだ姿を俺は後ろからなんとも憐れな気持ちで眺める。
そりゃ、そうなるよな。


『ありがとうっ………シャンクス』



「〜〜〜反則だろ……っ」







瞬き厳禁







骨抜きになっちまうよ


prev next

[back]