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  28



ニナちゃんのことはすぐに連絡が入っていた。罠だとも分かっていたし、助けにもすぐ行きたかった。…けど、俺たちの立場ってもんは、それを許してはくれないんだよね。

「…分かるな、クザン。ニナも1人の海兵…覚悟は出来ているはずだ」
「………放っておくんですね」
「…すまないと思っている。また優秀な海兵が1人、命を落とす。」
「………………」

怒りが抑えられず、ピシピシと足元が凍っていく。
分かっている。俺たちはそういう仕事だ。いつ命を落としてもおかしかなくて、その覚悟が必要な仕事だということ。そして、1人を救うために多くの犠牲を払うこともできない仕事でもあること。……わかっている。分かっている。……そう言い聞かせた。
公私混同して、その1人が” ニナちゃん”であることに動揺しきっているのは、俺も大将失格であることも。…仮にこの1人がニナちゃんじゃなかったら…と思うと、自分は恐ろしく冷酷な奴であるはずなのに。

…情けねェ
好きな女の子1人、助けにも行けねェ自分が。

冷静になるためにテトラポットに腰を下ろして、水平線を見つめた。こうでもしてねェと、誰かに八つ当たりでもして、死人を出しちまいそうだったから。
…水平線の向こうに、船が見えた。
見覚えのあるその船は、七武海のある男の船。
それに気づくと、俺は足を動かしていた。水面を凍らせ、自転車をこぐ。アイツなら、と僅かながらの期待をしてしまっている自分は本当に情けねェ。結局、大事なときにあの子を護ってやれるのは俺じゃないのだと、気付かされてしまう。

そしてその船の傍に着くと、船…潜水艦の動きが俺に気づいたのか緩やかになった。暫くしてからガチャン、と入口らしきものが開くとそこから無事を祈っていた彼女が顔を出して

「…あお、きじさん」

そう、俺の事を呼ぶもんだから、俺は安堵を顔には出さねェように気をつけながら彼女を思い切り抱きしめた。

「…っ、青キジさん…」
「護れなくてごめんね」
「……すみませ、ッ…わたし、」

俺の腕の中で涙を流す彼女は、愛おしい。
ずっと俺の元に閉じ込めておければいいのに。
そう思わされる。
すっと彼女の涙を指ですくうと、潤んだ瞳が俺の姿をしっかり捉えていて、綺麗だ。

それをよそに、ニナちゃんを引き剥がして「話がある」と言う男…トラファルガー・ロー。その目線は、邪魔建てをしようとかそういうものではないのはすぐに分かって、俺はそれに応じることにした。





「経緯は分かった…彼女を助けてくれたこと、あの子の上司として礼を言っとくよ」
「別にお前の為じゃねェ。俺がニナに死なれちゃ困る。…それだけだ。」

まさか赤髪のシャンクスまでこの件に関わったとは思わなかった。赤髪の書状を見つめながら考える。… ニナちゃんの”人脈”は、それだけのものだということ。…向こうでトラファルガーのクルーと話をしている彼女からは想像もつかない。

「……本題はここからだ。」
「本題?」
「お前ら… ニナをこれからどうするつもりだ。」

その言葉にピクリと指先が動く。改めて目線を落とすと、トラファルガーの目が俺を睨みつけていた。

「…どういう意味?」
「黒ひげに餌として利用された女を…お前ら海軍はどう扱うつもりだと聞いている。まさかとは思うが…」

「────させないよ、それは。」

トラファルガーの言葉を途中で遮ると、ビリッと無意識に覇気が放たれる。
そのまさか…”殺す”なんて…させるものか。
だけど、…トラファルガーがそう一理をいうのも理解できる。”上”は内部分解を起こしかねない要因は排除したがるだろう。それはもちろん、殺してということも、有り得る。後腐れを残さないように。トラファルガーはそれを懸念している。

「だが、そうもいかねェ可能性もあるだろう」
「…」

ニナちゃんを護りたいのに、それができない可能性があるのが、俺の立場。正義を全うするための、立場。(…好きな女の子1人護れなくて、何が正義)俺は思わず目線を外した。否定ができないことを悔やみながら。

その後のトラファルガーの話を、俺は彼女のためにできることの選択肢の1つとして聞いていた。このあと彼女を本部に連れて帰れば、どういう判断が下され、何が起こるか分からない。

ただとにかく俺は、彼女を護れるように動く。

トラファルガーの話
赤髪の書状
ニナちゃん
俺の、できること。








選択肢は








結局1つしか、ないのかもしれない


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