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  12



「ローは?」
「あァ、今日も別行動だってさー」


朝からどこにも彼の姿が見えない。
「ニナが乗ってからはあんま別行動しなかったのになー」とモップに寄りかかりながら喋るのは、一緒の掃除当番のシャチだ。

私がこの船に乗って、なんだかんだ半年が経とうとしてる。
ローの何なのかわからないセクハラを乗り越え、随分お揃いのツナギにも慣れてきた。上まで着ると着替えが面倒だから半分は腰に縛り付けているけど。


その間で船長について分かってきたことは、
おにぎりと焼き魚が好き。梅干しは嫌い。
好きなものはハムスターみたいに頬を膨らませておいしそうに食べる。(かわいいというと睨まれる)
夜は、ほぼ寝てない。
たまに添い寝しろと声を掛けてくるけど、丁重にお断りしている。
舌打ちされる。(あの朝のこと忘れたとは言わせない)

あと、別行動が増えた。


私がこの船に乗って最初の1ヶ月は毎日船にいたし、よく話もしていた。
ただ、さっきシャチが言ったように、もともとよく別行動はする人だったらしい。

「でも、何か最近は袋持って帰って来るよな」

前まではそんなのはなかったんだけどなァ


帰ってくる時間はまちまち。早いときもあれば夜中のときもある。
ただ、シャチの言うように彼の手にれなりの大きさの袋が握られているのを私も何回か見かけている。
当然、中身は何か興味本意で聞いてみたが、薄く笑ってまだひみつだと流された。

あと、別行動のことで言うと、添い寝は決まって別行動から帰ってきた日の夜に誘われる。私が起きている時間に帰ってきた場合だけど。
ペンギンにその事を何でかなと愚痴をこぼすと、無茶してるんだろうと目線を落として言った。

寂しそうな顔をしていた。


「…シャチは、寂しくない?」

「はァ?何がだよ」
「ローがいなくて。船に」

私もモップがけを再開しながら、シャチにそう聞くと、うーんと唸る。


「俺は別に寂しいとは思ってねーな。連れていって欲しいとは思うことはあるけど。」


あっけからん。
ベポはずーっと寂しいって言ってる。
キャプテンまだかなーって。
ペンギンも普段は出さないけど、あの時はすごく寂しそうだった。
だから、ちょっと意外な答えだ。


「てっきり寂しいかと。」
「あー、ニナが寂しいと思うから?」

そうニヤニヤと口角を上げるシャチを、とりあえずべちんとぶっ叩いておく。いてぇ!と頭を押さえたけど知らない。


「ッじゃなくて!みんなも寂しそうだから…シャチもかなって思ったの」
「…だって、自分が居なくてもこの船は大丈夫って思っないと、別行動なんてできないと思うんだよね。…あの人は、俺らがちゃんとこの船守れるって信じてくれてる。」

それってすげーうれしくね?


少し、照れくさそうな笑顔でシャチは言った。

そうか。
私は、連れて行って貰えないのは弱さの証明だとばかり思っていたけれど


「シャチはすごいね」


彼のために
この船を守っていきたいと
思わされた。







思いを馳せる








ただ、無事でいて


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