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まさか、こんなところでスマイルの話を聞くことになるとは思わなかった。
人造悪魔の実 スマイル
七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴがシーザー・クラウンという科学者とともに量産を計っているもの。
裏社会に流し込み、世界に混乱を招きながら自分の懐を金でいっぱいにしている、やつ。
俺が、心から憎み復習を誓う男。
「…話は、分かった」
ニナが実験台になってしまったことにも、ドフラミンゴの陰が見える。
ここで仲間にしたのは、偶然か・必然か。
思い出したくないだろうことを話させてしまったことをニナに謝ると、何も気にしてねェように「結構、この能力気にいってるから」と笑った。
あの計画を始める時間が迫ってきている。
そのことに思いをはせながら、目の前の女の頬に手を添える。
…あと5年か。
俺に命を預けるといったニナ。
その半分は、俺のわがままに付き合わせることになる。
「ロー、さん?」
「…その”さん”付けをやめろ。中途半端な敬語もだ。柄じゃねェだろ」
「船長さんだし、そこらへんは敬意を示そうかと。」
「いい。やめろ」
他の連中は呼び捨てでよんでいるやつもいるだろう。
そう付け加えると、ニナを目をパチパチと瞬きをしたあと、いたずらににっと笑って「嫉妬?」なんて聞いてくるもんだから「そうかもな」と仕返しをしてやった。
負けた、と言わんばかりに頬を染めるニナに、気持ちが疼くのをおさえて、頬をひっぱってやる。
「いひゃぃ」
「何言ってるかわかんねーよ」
そんなやり取りをしてぱっと手を離すと、頬を摩りながらキッと睨みつけてくる目を見て、口角が上がった。
「ローさんは、」
「ロー」
「……ろ、ローは、悪人面だと思う」
「…失礼な奴だな」
頬をつねったことが機嫌を損ねたのか、俺を睨みつけたままのニナだったが、何かを思いついたように、口の前に掌を添えて、ふっと息を吐いた。
俺にそれが届いたときには、強い風に代わっていて、帽子が吹き飛ばされる。
「目元、暗いからなおさら」
帽子とった方が優しく見えるよ、とかなんとかぶつぶつ言いながら帽子が吹き飛ばされてボサボサになった俺の髪をすいと指で梳き、頭をなでる。
俺にこんなことをする奴は、…久しぶりだ。
その感触にピエロメイクの男の顔をふと思い出してしまう自分がいて。
こんなことをさせるのはどうしてだろうか。
この女、…ニナだからなのだろうか。
強気で勝気、その裏に見える弱さと柔らかい笑顔
俺の気持ちを動かすには十分すぎた
俺の頭にある手をつかむと、ハテナ顔で俺の顔を見てくる。
こいつの一つ一つの反応が面白い、もっと見ていたい
それに気づいたからには、と掴んだ手をぐっと引き寄せてバランスを崩した体を抱きとめる。
「なな、なに」と動揺を隠せず、俺の腕の中で顔を見上げてくるニナ。
それを俺は、…俺は、愛しいと思っている。
「ニナ」
「ひ、ッ…ちょっと耳元やめてよ、くすぐったい!」
かがんで耳に口を寄せるだけで、ビクリと反応する体に、また、気持ちが疼くのを感じながら、楽しくて楽しくて仕方がない。
耳を隠した手を引き剥がして、赤く染まり始めたピアスが輝く小さい耳に、もう一度口を寄せて、俺は囁いてやった。
「俺に惚れろ」
勝利宣言「ッはあ!?」と顔を真っ赤にして、大きな声をあげながら俺の胸板を押し貸すその姿に、俺はまた喉を鳴らして笑った。
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