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「ここが倉庫、で、ここはオペ室。」
「広いのね。…迷子になんないようにする」
ローさんの指示通り、イッカクが船内を案内してくれた。
見た感じは特別大きな潜水艦って感じはしなかったけれど、いざこうやって回ってみるとそれなりの広さを実感した。
というか、さすが「死の外科医」。オペ室まであるんだな…。
「オペ室は、最近まで患者がいたんだけど、もういないから空っぽ。一応キャプテンの許可がないと入れないから、見たかったらあとでキャプテンに見せてもらって。」
「ん、わかった。」
“最近まで患者がいた”。ね。
私の島にも流れてきていた噂が本当なら…
麦わらのルフィ、かな。
そんなことを思いながら、最後に、と案内されたドアの前で立ち止まる。
「ここがキャプテンの私室!」
「え、あーそっか。最後に寄るよう言われたんだったね」
「そゆこと。じゃあ私一回仕事に戻るから、もしまた部屋がわからなかったらいつでも聞いて!」
「ありがと、イッカク」
正直、海賊船に乗る時点で、女の子がいないことは覚悟の上だったけれど、イッカクがいてくれてちょっと安心している。
女特有のものとか、いろいろあるし。
バイバーイと、明るく去っていくイッカクを見送ってから、鉄でできた堅そうなドアを見つめる。
なんとなく、入りづらい。
「…いつまでもつったってねぇで、入ったらどうだ」
そんなことを考えていると、ドアの向こうから部屋の主の声。
(何故わかった…)
なんだか、ちょっと機嫌が悪い?ような気がするけど。
「失礼しま、す…」
ガチャリと思いドアを開けて、部屋を見て思わず言葉を失った。
本棚いっぱいの医学書。薬や医療道具。
物はたくさんあるのに、整理はされていてごたついた感じはない。
“死の”とかつけられちゃってるけど…外科医、お医者さんだもんな…。すごい。
「見ても面白いモンじゃねェぞ」
「そんなこと…すごい、ですね…。」
「フン…座れ。」
部屋を見まわし続ける私を小さな椅子へ促すローさん。私はその椅子に促されるまま座る。
ローさんがこちらをじっと見てくるので、首を傾げて見つめ返す。
「とりあえず、脱げ」
「…………は」
そういって服をぐっと引き上げようとするローさんってむりむりむり!!ばかなのかこの人は!!!
「なな、なにを!!」
必死にローさんの腕をどうにか抑えて、服がめくられることを防ぐ。
なんなんだこの人は!!
「うちのクルーになる上で、診察するだけだ。それとも…」
何か期待することでも?
整った顔をぐっと近づけてニヤリとそうささやくものだから、さすがに顔がぼわっと熱くなるのを感じた。こんの船長は…っ
「クク…脱げ、は冗談だ。ただ、少々触るぞ。」
「っ…上等…」
キッと睨みつけると、ローさんは満足げにククッと笑って、首にぶら下がっていた聴診器を自分の耳に着けなおした。
脱がすとまで言っていた割には、その後はいたって真面目だし、恥ずかしいだろうところは配慮しながら診察してくれていた。
真剣にカルテに私の情報を書いていく姿が、少しかっこよくて。
「見つめすぎだ。」
とチョップされた。
そんなに見惚れるほどか、なんてローさんはニヤニヤ。
私は素直に、
「まあ、その。うん。かっこいいなあと。」
そう答えてローさんを見上げると、目を真ん丸にしたローさんがこちらを見下ろしていた。
ぱちんと目が合ったと思えば、すぐにそらされて、フンと鼻で笑われた。
けど、ちょっとだけ。
ほんのちょっとだけ。
耳が赤い、気がする。
じゃくてん みっけストレートに、よわいのかな
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