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  46



風が涼しくてテラス席でご飯を食べるには丁度いい天気。お客さんに料理を運んでいると、珍しく会わないな、と思っていた男がふと現れた。

「店移転したなら言え」
「………してないから」

ルフィたちが来てからもう5日目にもなる。けど、彼だけは一切姿を見せなくて、ナミに言われたことを忠実に守ってるんだと勝手に思っていたけれど…まさか、安定の迷子が発動していたとは。

「あァ!?じゃァなんでこんなに時間かかんだよ」
「貴方が迷子だったからでしょ」
「ま、…ちげェ。」
「違くない」

ギリと悔しげに歯を食いしばるゾロは、なんだか頭に葉っぱとかついてて、一体どこをどうやって通ってきたのか…まったく理解できない姿。半分呆れつつも、折角着いたんだからと空いているテラス席に座らせる。座るなり酒、と一言私に言いつけたゾロは、はあとため息をついている。流石に疲れたのだろうか。なんて、思っていたところ。

「ニナすァん!お肉焼きあがった…って!テメェこのくそマリモ!!何でここにいやがる!!」

そうだった。
この男が今は店にいたんだった。と頭を抱えた。
この島に上陸してから、サンジはさりげなくお店を手伝いに来てくれていたのだ。(初日ナミにボコボコにされたくせに)「バラティエにいた頃を思い出すから」と、懐かしげに目を細めながら微笑んでいた。…のだけれど。こうやって2人が揃ってしまうと、なんとも面倒なのだ。

「ア?何だテメェか。」
「折角ニナさんを独り占めしてるっつーのに、テメェが来たら台無しだろうが!」
「じゃァテメェが居なくなれ。エロコック」
「チッ…マリモ頭のマリモくんは、人の言葉がわからねェようで」
「あァん!?」

はい。面倒。
ゲンナリと目の前の状況を暫く見つめていたけれど、もういいやと吹っ切れることにした。お客さんに「気にしないで」と声をかけながら配膳と料理を再開する。暫くして、、チラと2人に視線を送っても、未だ言い合いを続けている様子が分かって呆れた。何してるんだか。
そんな事を思っていると、常連のディゴさん達が私に声をかけてきた。

「そういやニナちゃん!もう少しで冬祭りだなァ」
「えっ…もうそんな時期?」
「今年はアザラシ帽子の兄ちゃんいないから、店開けるのか?」
「そう、ね……」

ディゴさんたちが言う冬祭りは、この島の"ロンリエイト"と呼ばれる年に1度しかない特別な日に行われるお祭りのこと。ロンリエイトは、春島であるはずのこのリシャフで、その日だけは雪が降るという不思議な日。だからこの島の人達は、この特別な日に祭りを開いているんだそうだ。
それも私にとって3回目…。前回は、たまたまローが滞在した日と重なって、2人で祭りを楽しむことができたけれど…今回はいないしなあ。

「折角だし、暖かいものでも配れるようにしようかしら」
「おお!俺たちにゃ最高だな!」」

このお祭り、男の人たちは子どもたちの楽しみのために大きなかまくらや滑り台を作るという伝統があるらしい。特別な1日にするためだとか。お祭りらしく出店が並んだり、最後には花火も上がる。お客さんとして歩いてきたこの2年…今回はお店側でもいいのかも。

「ちょ、待て待て!」
「あん?兄ちゃんたち喧嘩はいいのか」

うーんと悩んでいると、バタバタと騒がしく喧嘩していた2人が慌てたように店に入り込んできた。

「祭りがあるのか?」
「あ、あァ。あと1週間後ぐらいだ」
「「……」」

沈黙。に、なんだか嫌な汗をかく。先程まであんなに大騒ぎしていたくせ、祭りの話を聞いて黙り込んだ2人は、そのまま睨み合っている。

「ニナ」
「ニナさん」
「は、はい?」

そしたら急に同時に名前を呼ばれてびくりと肩を跳ねさせてしまった。ゾロにもサンジにも、あまりに真っ直ぐ見据えられて思わず肩を竦める。

「当日、迎えに来る」
「俺とデートしよう」

右手はゾロに強く、左手はサンジに優しく。
両手を取られて同時に誘われ、戸惑いを隠せないが、大真面目な2人の目線に、キョロキョロと目を右往左往させるしかできないのだ。








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