機械であり奇怪である機会を

私は朱ちゃんの運転する車に乗り、局長のいる厚生省・ノナタワーに向かった。
「………」
しかし、何故また局長が…。
そう私が考えていたところだった。
「あ、そんなに緊張しないでっ。大丈夫だから」
朱ちゃんがそう言って、微笑んだ。
「…大丈夫だといいんですけど…」
私は小さく呟いた。
幸いなことに、その言葉は朱ちゃんには聞こえなかったようだった。

「ついたよ」
車を停め、朱ちゃんはそう言った。
「あの、常守…さん…ここは…?」
きかずとも、私にはわかっている。ここはノナタワー。厚生省のトップがいる場所。
思わず、足が震える。
「常守さん、なんて堅苦しい呼び方しなくていいよ。朱、って読んでいいから」
「は、はぁ…」
「大丈夫よ、ここは変な場所じゃないから」
朱ちゃんはそう言って笑いかけた。その笑顔になんだか、胸がほっこりした。
大丈夫。朱ちゃんがそう言うのなら不思議と大丈夫だと思えた。

朱ちゃんと二人で、局長のいる部屋まできた。今更ながらに思うが、凄いところにいる。なにせ心臓に接触しているのだから。
「失礼します。局長、今回はどのような用件で?」
「うむ。犯人逮捕に協力してくれた市民がいると聞いてね。昨今は珍しいうえに、非常に勇敢な行動をとってくれた。直接お礼が言いたくて常守監視官に連れてきてもらった所存だ」
その凛とした声に思わず背筋が伸びた。
「…お礼…ですか?」
私がそう聞き返すと、局長は答えた。
「あぁ、なにせ、犯罪に関わると色相に影響すると言って、今は刑事でさえも少ない時代だ。勇気ある行動といって良い。それでいて、君のサイコパスは健全だ」
簡易式のサイコパス測定器を差し出され、私と朱ちゃんは覗きこんだ。
そこに映し出された数値は

「…10…!?」

非常に低い数値…。私は驚かずにはいられなかった。
「さっきまではあんなに変動してたのに…」
「体質的なものだろう。そういう人もいるからね」
局長の言葉に、一瞬ぴくりと反応した。
もしかして、私は免罪体質なのだろうか…?
しかし、それを今ここで聞くわけにはいかない。免罪体質というのは公安局…いや、シビュラの極秘事項。それをただの一般人が知っているわけはないのだから。

→続く

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