真実の贄(にえ)を捧げよ

「君に、折り入って話がある」
「…っ、はい?」
考え事をしていた所為で、思わず上擦った声で返事をしてしまった。
「彼女と二人で話をしたい。常守監視官、悪いんだが、少し席を外してもらえないだろうか?」
「わかりました。何かありましたら、およびください」
朱ちゃんはそう言って部屋を出て行った。

「…それで?私に何の用でしょうか?禾生局長……いや藤間(とうま)幸三郎(こうざぶろう)さん?」
私の言葉に、局長はぴくりと反応した。

「それとも……シビュラシステム、と呼んだ方がいいのかしら」

「…君、」
私はニヤリとほくそ笑んだ。
「ふふっ、その反応は、藤間さんでしたか?」
「…君は、何者なのかな。僕らのことを知っているなんて」

「ただのしがない子供ですよ。私なんて。それ以下でも、それ以上でもない」

私は真っ直ぐ、局長−藤間を見つめた。
サイボーグと言えど、生きた脳があるんだ。人間の感情くらい理解できるだろう?
私から、目を反らすな。
そういう密かな意志を持って藤間を見つめた。
「…やはり、君は想像以上の人間のようだね」
「お褒めいただき光栄です」
私がクスクスと笑うと、藤間さんも口元だけで笑った。
「それで?私にお話って?」
「あぁ、今ので解決したよ。君はどうやら、僕らの知らない存在のようだからね」
藤間さんの言葉に、私の頭には、はてなが浮かんだ。
「…?」
「さっきも言ったけど、犯罪に関わる人間はこの世の中に少なくなっている。そんな中で君は、犯人逮捕に協力するという、いわば破滅行為に挑んだ」
「破滅行為…」
「そうだよ。今の時代、サイコパスが全て。犯罪係数の悪化は、即ち社会的な死を意味するからね」
「……………」
つまり、私の何気ないあの行動は、一般人とはかけ離れていた、ということになるのか。
「…それで?あなたは…いえ、あなたたちは、私をどうするつもり?極秘事項を知ってる私を消すの?」
私なりに覚悟を決めてシビュラシステムに話しかけた。
私も消されるのかなー、だとしたら人生短かったなー…なんて、少し他人事みたいだけどね。
「…あ。そうだ」
いいこと思いついた。
「ねぇ、シビュラシステム」
私、きっと不適な笑みを浮かべてるんだろうな。

「取引、しませんか?」

→続く

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