堕天の煽り

覚悟を決めて私は答えた。

「私は、八月三十一日(ほずのみや)十七夜(かなぎ)です」

「十七夜ちゃんね。住所は?」
「あー、待って待って、朱ちゃん」
志恩さんが朱ちゃんの言葉を遮った。
「えーっと、十七夜ちゃん?この子ねー、色相も数値も、安定してないのよ。まぁ、事件に巻き込まれたんだから普通っちゃあ普通なんでしょうけど…まだ注意が必要な感じじゃあない?」
「え?」
私と朱ちゃんは志恩さんの手元を覗き込んだ。
手元のタブレットに映し出されているのは私の色相と犯罪係数。
まるで、折れ線グラフのように不安定に係数が移ろっている。
それに連動するかのように、色相がグラデーションで表示される。
「やはりセラピーが必要かな…」
朱ちゃんは申し訳なさそうに私に言った。
「セラピー…?」
「ええ。犯罪に巻き込まれると、サイコパスが濁りやすくなるの。それを、セラピーによって治療するのよ」
朱ちゃんがそう言ったときだった。

チリリリン

「!」
朱ちゃんの携帯情報端末がメールの着信を告げる。
「…えっ、局長!?」
「局…長…」
どうやら、メールの送り主は、公安局局長・禾生(かせい)壌宗(じょうしゅう)。
メールを読んだ朱ちゃんは、驚いた表情で私をみた。
「あ、あのね、十七夜ちゃん。驚かないできいて?」
…ということは、驚くような内容なんだろう。

「局長が、あなたに会いたい、って」

「……え?」
…はい?
思わず聞き返してしまったではないか。

どういうことだ、狡噛(こうがみ)。

…思わずギノさんの真似をするところだった。
すんでのところで言わなかったが、きっと、PSYCHO-PASSファンならそう言うよね。わかってくれるはずだ。
…そういえば前に、SNSのコミュニティーサイトで誰かが言っていた。
“PSYCHO-PASSファンは、わからないことがあったら『どういうことだ』と狡噛にきき、それでもわからなかったら『槙島(まきしま)の所為』にすればいい”と。
…あれは、名言だと思ってる。

→続く

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