問の意を理解せよ

「あっ…」
聞いたことのある声…。
警備ドローンの後ろから現れた、一人の男性。

(宜野座(ぎのざ)…伸元(のぶちか)…!)

監視官のギノさんが、立っていた。
(わっ、本物っ!?)
私は少し驚いたが、興奮のほうが大きかった。
(あっ、危ない…)
ナイフを首に突きつけられた人質が、嬉しそうな表情をしていたら、怪しまれる。
まあ、公安局の刑事が来たら、人質は安心するだろうが。
「公安局だ。抵抗せず、速やかに人質を解放しろ」
真っ直ぐに構えられたドミネーター。
電子を纏った鉄の銃。すべてを支配するシビュラの目。
(携帯型心理診断・鎮圧執行システム…ドミネーター…!)
当たり前だが、本物だ。
(形態は…ノンリーサル・パラライザー。撃たれても死なないな)
私は少し安心した。
「…………」
しばらく、犯人と宜野座さんは無言で睨み合っていた。
このままじゃ、埒(らち)があかない。
なんとか犯人の隙をつけないものか、と機会を見計らっていた。

その瞬間は、一瞬。

男がナイフを握り直す、その一瞬だった。
私は、男の脇腹に、思い切り肘をくらわせた。
少しでいい。私と男の間に隙間が出来れば…盾になっている私がどければ、パラライザーで撃つことが出来る。
反動で私は地面に転がる。

一瞬閃いた電光。

パラライザーの神経ビームだ。
狙い通りだった。ビームは犯人に直撃。
「ふぅ…」
無駄に緊張した…。
「大丈夫!?」
「え?」
聞いたことのある、若い女性の声。
差し出された手から、目線を顔に上げる。
「あっ…!」

きれいに切りそろえられた短い髪。
社会人にしては、まだ幼さの残る顔。

(常守(つねもり)朱(あかね)…!?)

「…?どうかしたの?」
「あっ、な、何でもないです!」
間違いない、常守朱だ。
出会ったのが朱ちゃんで安心した。
(でも、あんまり下手なことしたら疑われる…)
新米とはいえ、朱ちゃんは公安局に勤める刑事さんだ。
「顔色が悪い…」
朱ちゃんは宜野座さんに何か話しかけている。
…私の意識は、そこで途切れた。

→続く

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