通りがかりに雨

…とは言っても、知り合いがいるはずもなく、いたとしても頼ることはできない。
こんなとき、頼れそうなキャラクターが通りかかってくれれば…。しかし、そううまくいくはずがないのもわかっている。
街角の広場のベンチに腰かけた。
そして、何か使えそうなものはないか、鞄を漁る。
学校帰り、いつものように地下鉄に乗ろうと、駅に降りる暗い階段を降りていたら、段差を踏み外し、転げ落ちたのだ。そして気がついたら、ここにいた。
だから持ち物は鞄くらいしかない。
「うーん…」
しかし鞄に入っているのは、教科書やらノートやら…学生なら誰でも持っていそうなものばかりで、これといって特別なものはない。
「携帯…ダメだ、電池切れてる…」
私は昨日の夜、携帯を充電し忘れ、朝急いで充電したことを思い出した。
「確か、朝の時点で65パーセントくらいだったからなぁ…」
充電器はあるものの、使える保障はない。
「仕方ないか」
携帯を鞄に仕舞い、腕時計を見た。
時間が同じなら、夜の8時30分。部活でこれくらいの時間になることはよくあるが、見知らぬ土地ではさすがに心細い。
「…冷えてきたなー…」
制服だけでは、冬になりかけのこの季節、夜はやはり少し肌寒い。
はあ、と小さなため息をついた。
その時だった。

「ひゃっ!!??」

ヒヤリ。
唐突に、首に冷たく硬いものが当たった。
…ナイフ。

そう認識するのに、1秒はかからなかった。
(嘘でしょ…)
背中を冷たい汗が伝った。
まさかトリップした先で事件に巻き込まれるなんて。
(でも好都合かも…公安の人たちが来てくれれば…)
ちら、っと犯人の顔を見た。
冴えない、これといった特徴のない顔の男だった。
追い詰められたら表情で、私の首にナイフをあてている。
ドローンが、男を追ってベンチを取り囲んだ。
(ああ、街頭スキャナに引っかかったのね…)
「来んな!あっち行け!」
首筋にナイフを突きつけ、男はドローンを威嚇する。

「おとなしく人質を解放しろ」


→続く

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