「あ、」
自分より高いところに手のひら一つぶんの隙間を見つけた。
「ん、も…うすこしっ!きゃっ!!」
バキッ
踏み台にしていたものが割れ床に落ちてしまった。
「いてて、」
埃だらけ。小さな傷がヒリヒリと痛い。幸い今日は満月だから真っ黒で怖いってことはないけど、逆に月光の醸し出す雰囲気が不気味に感じる。
「そういえば、飴玉持ってた!」
鞄を漁ってみると未開封の塩キャラメルを発見。飴玉と思ってたのはキャラメルだった。キャラメルの方が栄養高そうだし、お腹も膨れるから嬉しい間違いだ。
「おいひ、」
小さなキャラメルを大切に大切に舐めていく。
一つ、二つ、三つと増えていくキャラメルの袋をどこか他人事のように見つめる。
なんで私は此処にいる?
なんで私は痛い思いをしてる?
なんで私は空腹を我慢してる?
「…なんで、」
「何かあったら直ぐに俺を呼んでね?」
「!…ミ、ナト」
あの時のミナトの声が蘇る。私は壊れたようにミナトの名前を呼びつつける。
「ミナト……ミナト、ミナトミナトミナト!ミナト!!!ん、ふっ、くっ」
次々と溢れる涙を私は止める術を知らない。
「クシナ?いるのクシナ!!」
「うそ…ミナト!!ミナト!!」
「クシナ!!待ってて今開ける!離れてて」
バキッ!
パラパラ、パラ
木片と土煙が舞う中ミナトはいた。
「ミナト……?」
「呼んだでしょ?俺のことクシナが俺を呼んだらいつだってどんな時だって駆けつけるよ。……でも、ごめん。恐かったね。……痛かったね」
「っ、ミナト!!!」
私はミナトに抱きしめられた。ミナトの声があまりにも掠れているから、だから私はミナトに顔を埋めた。ミナトが温かくて、優しく抱きとめてくれるから私はまた涙が溢れだした。
「また、泣けてきたってばね!せっかく泣き止んでたのに!」
「泣けばいい、俺はここにいるから」
私は泣き疲れ眠るまでミナトに抱きしめられ泣いた。