坂田銀時
本日のかぶき町も実に平和である。なまえはサボりの沖田と逸れて1人巡回中であった。やっと慣れてきた江戸は顔見知りも随分と増えた。嫌われている真選組であるが紅一点の女隊士ということ、なまえが常に笑顔であることからなまえのファンはあっという間に増えていった。
「なまえちゃん饅頭どうだい?」
「新鮮な野菜が安いよ!」
という具合にあちらこちらから声をかけられる始末である。
「おっちゃん、俺にもその饅頭くれよー」
銀髪に着流しを着こなし、腰には“洞爺湖”と書かれた木刀を持つ男がなまえの前に現れた。その男死んだ魚のような眼ふてぶてしい振りまい。年がら年中摂取しているであろう糖分の甘い匂いに交じり香る加齢臭。
「銀ちゃ、ん?」
「え、なまえっ」
(同窓会とかで久しぶりに会う友人が親になってたり、社長になってたりするじゃん?)
(銀ちゃんが、マダオ!!?)
(なまえが、真選組!!?)
◇◇◇
「でも、びっくりしちゃった」
「いやいやそれはこっちの台詞だからね。なまえちゃんがあの後どうしたの?俺たち心配してたんだよ?」
処変わってここはファミレス。銀時の目の前には好物の苺パフェ。
「そうだよね、ごめんね」
項垂れるなまえの腰元を見て目を細める銀時。お洒落だ、恋だのしている筈の年頃の娘には不釣り合いな代物。
「まだ、そんなもん持ってんのか」
「うん、やっぱり先生から教わったものは一つだって捨てられないもの」
そう言いなまえは腰にある刀に手を添える。この刀で沢山の者を守ってきたつもりだ。先生の教えをいつも胸に、
「女は愛嬌、辛い時こそ笑いなさいって、人を愛しなさいって、いつも先生は私に言ってた」
「誰が四六時中無理しろって言ってたよ。先生はこうも言っただろ?心を許せる同志の前でしっかり泣けってってよ」
「ふふ、何それ。私がまるで銀ちゃんに心を許してるみたいな良い方」
「だって、そうなんだろ?」
机を濡らす滴。拭うこともせずただなまえから溢れるそれを銀時は見つめていた。
「あんまり見ないでよ。ばか。…ただいま」
「おかえり」
(みんな変わってちゃうんだね)
(そうだな、でも、変わらねーもんもある)
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