15
インハイも終わり、私たちの代が引退に向けた引き継ぎ準備を行う中、夏休みが明けて新学期がやってきた。
隼人とは、結局まだしっかりと話せてはいない。でも、きっとこの関係がもうすぐ1つ前に進む。そう思っていた。
***
「名、あんた新開くんと別れたの?」
新学期、教室に入ると嫌に視線を感じると思ったら、仲の良い友人が私の元にやってきてこんなことを聞いてきた。
「はあ?なんで?」
「これ」
そう言って友人が見せてくれたスマホの画面には、隣のクラスの美人さんと隼人が抱き合っている写真が映っていた。
「……なにこれ」
小さな声で呟くと、周囲にいた女の子たちが、「やっぱり、新開くん浮気かな?」「姓さん、知らなかったんだ」と思い思いの言葉を話し出す。
「ちょっとよく見せて」
どう見ても隼人の腕がその女の子の体を抱きしめていて。
「………」
友人になんと言えば良いのかわからずその場を去ってしまった。
「んでェ、俺のクラスまで来て何ィ?名チャァン」
「…………」
無言で目の前の彼が座る椅子を下から蹴る。
「暴力反対ィ」
「何これ」
「お前らが面倒なことしてッからだろ」
「そうだけど」
「で、解消したのォ?」
「知らない」
「アイツから連絡は?」
「無視」
そんな機嫌悪くなるなら無視すんなヨという目の前の彼の正論は聞き流す。
「荒北、今日一緒に食堂行こ」
3年に入ってから夏休み前まで、隼人と食堂に行って、いつものメンバーでお昼を食べていた。
「ハイハイ」
面倒くさそうに返事をする我が部のエースアシストくんに感謝をして教室を出た。
***
昼休みまでに何度も隼人から着信が入っていたが、何を聞けばいいというのか。
言ってみれば別に私は正式な彼女ではないし、隼人が好きな子を作ろうが自由だ。
「何が話の続きよ」
そうブツブツと荒北の隣でひとり言を言っている内に食堂に到着した。
「名…」
隼人がこちらを気まずそうに見つめているのがわかるが、声掛けに反応することができない。
いつもなら隼人の隣に座るけれど、今日は隼人の目の前に座っている東堂の隣に腰かけた。
食堂中の注目を集めているのも、私が東堂の隣に腰かけたことにざわついているのもわかるがそんなのは知らない。
ひたすら無言で目の前の食事を食べ続ける。
「東堂プリンちょうだい」
「嫌だ」
「いいから、頂戴」
「買ってくればいいだろう」
「買い忘れたの!」
こんなの八つ当たりもいいとこだ。
ごめん、と心で呟きながらも、触らぬ神に祟りなしとばかりに私にプリンを差し出した東堂の手からプリンを奪い蓋をあける。
「名、プリンなら俺のやるから尽八に返してやれよ」
「いらない」
「なあ」
「隼人、好きな子できたら仮カップル解消だよね?じゃあ今日で終わりってことで」
「名、違うって」
「東堂プリンありがと、じゃあね」
早口で、隼人からの声掛けなんて耳に入れないように喋り倒し、逃げるようにその場を去った。