wazatodayo

 07


『夜、電話していいか?』

そう隼人からLIMEが送られて来たのは、隼人が私を助けてくれたその日隼人が寮まで私を送り届けてくれてからすぐのことだった。

『いいよ』

その3文字を返してお風呂の準備をする。
部屋着に着替えようとブラウスを脱いで目に入るのは胸元につけられた跡。

「っ…」

気持ち悪かった。何度も何度も心の中で隼人に助けを求めた。
何度彼の名前を呼んだのだろうか、私の願いに応えるかのように現れた彼は、少女漫画に出てくるヒーローのようだった。

私の心を大きく揺さぶるには十分すぎる出来事で、この気持ちに気付かないフリをするのに精一杯だ。


お風呂に入って何度も何度も体を洗い自室へ戻る。
ベッドの上に座って思い出すのは今日の隼人の姿。
大きいブレザーをふわりと肩からかけてくれた隼人は王子様のようで…なんて考えて、王子様なんて私のキャラじゃないな、と自分にツッコミを入れる。

あれから結局次のチャイムが鳴るまで隼人は私の手を握ってくだらない話をしてくれていた。
本当に隼人がいてよかった。そんな風に思い返していると携帯が鳴った。

「もしもし」
「あ、もしもし、名?」
「うん、どうしたの?電話なんて珍しいね」
「今日は名が寝付くまで電話してようかなって思ってさ」
「えー、大丈夫だよ」
「1人になって暗い部屋にいたら思い出しちまうかもしれないだろ?」
「……ありがと」

ずるい。こんなに大切にされると気持ちに歯止めが効かなくなりそうだ。

それから隼人と今日の部活の話や隼人の弟くんの話、私の家族の話、そんな話をした。

「隼人、眠くなって来た」
「ん、寝ていいぜ」
「寝息聞かれるのやだ」
「全然いいのに」
「恥ずかしいから嫌」
「眠れるか?」
「うん」
「もし眠れなくなったらいつでも電話して」
「うん、ありがと」
「なあ、名」
「うん?」
「学校でも言ったけど、俺、俺なりにちゃんと名のこと大切にしようと思ってる」
「んふふ、仮なのに?」
「仮って言葉で有耶無耶にして狡いとは思うけどさ」
「うん」
「だから本当に俺のこと頼ってくれ」
「うん、ありがと。私も隼人のこと、大切にするね」
「偽物のカップルなのに変だよな」
「うん、すっごくね」
「でも、うん。そういうこと」
「ありがと」
「じゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみなさい」

危うく、好きって言葉が自然と出てきそうだった。
すっかり隼人のことで頭がいっぱいになってしまった私は違う意味でなかなか寝付けない。

「どうしよう…好きになっちゃったよ…」

認めざるを得ない自分の気持ちを口にするとカァッと頬が熱くなる。

以前、どっちかがどっちかのことを好きになったらどうする?と聞かれたら時のことを思い返していた。

まるで気があるような素振りをみせながら、仮の彼氏として、私の横にいようとする隼人に若干のもどかしさを感じながら、それは私も一緒か、とため息をつく。

暫くはこのまま。いつの日か本物の恋人同士になれる日は来るのだろうか、なんてどうしようもない願いを抱きながら目を閉じた。


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