05
2人の関係が始まってから3ヶ月。
クリスマスイブを一緒に過ごして、少しずつ自分の気持ちがフラフラとし出したことに少し戸惑っていた。
「姓さん、ちょっといい?」
昼休み、そう声をかけてきたのは以前私が告白を断ったことのある男の子。
確かこの人に告白された日に隼人から偽造カップルを提案されたんだっけ。
今日は週に一度、隼人とお昼を食べることになっている日。
彼に、わかったと声をかけて隼人にLIMEを送った。
『ごめん、ちょっと遅れる』
***
連れてこられたのは今はあまり使われていない資料室だった。
「姓さん、本当に新開と付き合ってるんだね」
「…うん」
「なんで、俺じゃダメなの?」
「え?」
「俺のこと、今は誰とも付き合う気はないって振ったよね」
ジリジリと壁に追いやられていく。ちょっと…まずいかも。
「ごめんなさい」
「なんで新開ならいいんだよ」
「……」
どうにかこの部屋を出なければ。
「俺、すげえ好きなんだよ、なんでわかってくんねぇんだよ!」
「ちょっと待って、」
手を掴み壁へ押し付けられる。
「どうしてもダメなら、思い出ちょうだい」
そう言ってニヤリと笑った彼は私の首筋に舌を這わせる。
鳥肌が立つ。
「や、…だ」
必死な抵抗するも男の力に敵うわけもない。
「やだっ、やめて、やだ」
「こんなとこ誰も助けに来ないよ」
「やだ…」
彼が壁に縫い付けていた私の手を自分のネクタイで縛り上げた後、私のシャツのボタンを次々と外していき、下着が露わになる。
「新開はもう、見たの?俺が先かな」
気持ち悪い。誰か助けて。
声に出したいのに恐怖で声が出ない。
彼が胸元に口を這わせて吸い付く。
「やっ…」
「跡、つけといたから」
「やだっ…本当にやめて、やだ」
彼の手が背中に回りブラジャーのホックに手がかかる。
「やだっ…やだ、隼人!隼人っ、たすけて…」
「良いね、呼んでもこない彼氏の名前、泣きながら必死に呼んでるの唆られるわ」
「やめてっ…助けて誰かっ…隼人っ」
彼が私の胸元を覆う下着を外そうとした瞬間、ガラッと音を立ててドアが開いた。
「名!!!」
「っ…、隼人っ…」
名前を呼んで助けを求めた彼の顔が目の前に現れて安心する。力が抜けて思わずその場にへたり込んでしまった。
「悪い、遅くなった、もう大丈夫だからな」
そう言うと隼人が着ていたブレザーを脱いで私にかける。
「何してんだ、お前」
「チッ…」
「何してんだって言ってんだよ」
「………」
「名、こいつどうする、どっかに突き出すか」
私に襲いかかっていた彼の胸ぐらを掴み見たことのない剣幕で睨みつけていた隼人がこちらに目をやる。
「も…やだ…」
とにかく、目の前からいなくなってほしい。恐怖からなのか体の震えが止まらない。
「……お前、もう2度と名に近付くな、次何かしたら俺お前のこと殺しちゃうかも」
隼人がそう言って彼の胸ぐらを離すと、その男は急いでその部屋を出て行った。
「は、やと…」
隼人はその男が開けたまま出て行ったドアを乱暴に閉めると私の手を拘束していたネクタイを外し、彼がかけてくれていたブレザーごと私のことを抱きしめた。
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