wazatodayo

 未来の花束を予約して


「姓、」
「あ、福ちゃん、タオルかな?はいどうぞ。新開、パワーバー補充しといたよ」

あっという間に部活に馴染んだ彼女は期待以上の活躍で、瞬く間に部活になくてはならない存在になった。

「東堂、今日部活の後、付き合ってもらっても良いかな?」

変わったのは尽八と呼んでくれとそれとなく頼み続けたこと数回、彼女が俺を呼ぶ時に使っていた「くん」が外れて東堂と呼ぶようになった。

尽八と呼んで欲しいと言ったのに、と少々ムスッとすると、「新開も、下の名前で呼ぶからそっちも隼人って呼んでとか言うし、二人は私を女の子達の敵に仕立て上げたいの?」と笑って拒否された。

「隼人は姓のことを名と呼ぶのか?」と尋ねれば、「最近そう呼ばれる」と笑うから悔しくなって「俺も名と呼ぶ」と伝えると、彼女は何とでも呼んでと笑っていた。

***

放課後付き合って欲しい、と彼女に言われたのは自転車の勉強だ。
週に1回、部活後に部室で彼女にロードバイクについてを教えている。

「よく尽八の長い話を聞いてられるな」と隼人は笑っていたが、彼女は俺の話をニコニコと聞きながら勉強してきた疑問点を俺にぶつける。

彼女は1週間の間に数冊もの本を読んでやって来るから驚いたものだ。

「じゃあ、東堂が乗ってるのはリドレーか」

持ってきた雑誌を捲りながら俺に尋ねる。

「そうだ」
「東堂に似合うよね」
「乗ってみるか?」
「え?」
「ちょっと待ってろ」

驚いている彼女を置いて、ロッカーの中から自分のジャージを取り出す。

「スカートじゃまずいから、これを履け」

そう彼女に渡すと「本当に乗るの?」と言いながら彼女は更衣室へ向かった。

着替え終わった名と部室の外に出て愛車のリドレーの元へ行く。

限界まで下げても恐らく彼女には高いが、サドルをできる限り低くして、彼女に渡す。

「跨ってみろ」

恐る恐る、リドレーに脚をかけると彼女はつま先でどうにか地面を掴んだ。

「こわっ…」
「自転車は乗れるか?」
「そりゃ乗れるけど…これは話が違う」

ペダルを踏めばフラフラとして倒れかける。
倒れる寸前で愛車ごと彼女を引き上げると、恥ずかしそうに笑った。

「みんな、こんなの乗ってるんだ、すごいね」
「いつかこれでインターハイ表彰式、一番高いところに乗ってやる。その時は貰った花束を名にやるぞ」

そう言えば彼女は「じゃあいつか、東堂が一番最初に山の頂上に来るところ、写真で撮りたいな」と笑っていて、次の日の部活からより一層の力が出る俺は単純な男だと思った。

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