「ニノの耳ってじゃらじゃら」
「そない言うてるけど、ナマエやって穴いっぱいやん」


ニノの耳はいつも豪華だ。
ニコちゃんマークやバスケットボール、なんかよくわかんないキラキラしたの。ありとあらゆるものがニノの耳に凝縮されている。


「なんか意味とかあんの?」
「いみ?」
「これは誕生日記念、とか。これには願い事してあるとか」
「ああ、あるよ」

へーそうなんだ、興味深い、聞かせて。とニノの耳で笑っているニコちゃんマークを突ついた。


「ナマエが今突ついてんのは、いつでもスマイル忘れたらアカンで!って意味や」
「確かに、ニノいつもスマイルだもんね」
「せやろ?んでもってなー、このバスケットボールは普通にバスケ好きやからやんか」
「うん」
「これは大阪のダチから貰ってん」


次々とピアス紹介を受けていき、次に右耳のロブについた星のピアスを指差した。


「ニノ、スターになりたいの?」
「ちがうよ!(笑)」


噴き出すように笑うニノが、耳からスターを外した。ゴールドに輝くスター、きれいだなあ


「こいつはな、ナマエの心が輝くように、や!」
「んー、意味わかんない」
「ナマエ、ピアスの穴の数イコール何の穴の数か知っとる?」
「なにそれ、全然知らない。都市伝説?」
「スタジオの人から聞いたんやけどな、ピアスの穴の数イコール心の風穴の数やねんて」
「…かざあな?」
「せや」


ピアスの穴の数イコール心の穴の数、ねえ…
あまりピンとこないけど、ニノの表情は真剣そのもの。スタジオの人から聞かされたことを信じてるようだ。


「…で、私はホールの数の分、心に穴があいてると」
「まあ、そうなるやん」
「んなことないっしょー。この通り元気だし」
「わからんで?人間つらい過去なんて誰でもあるしな。自分が気づいてないだけで、心に蓄積されてんのかもやし」
「そうかあ?」


机に置かれたスターを人差し指で転がした。まだ信じてない私に、ニノがこう付け足す。


「こいつでナマエの心をピカらせよう思うたわけや!ええやろ?ロマンチックやろ?」
「よくわかんないけど、なんかそーゆうのって嬉しいね」
「ホンマに?ナマエが喜んでくれたら万々歳やん!」


普段男らしいのに笑うと女の子みたいに可愛くなるニノが大好きだ。だからニノが私を思って星のピアスを付けてくれていたことがすごく嬉しいのだけど、

「でも、それでニノの耳にも穴があいてると思うと、少し切ないよ」
「俺は大丈夫やで?ナマエおるもん、ナマエの存在ってスターやん」
「私スターじゃないよ!」
「謙遜せんでええ!せんでええ!ナマエ明るいし、居るだけでその場が和むんよ」
「えーそれじゃあ納得いかないよ」


机にポツンと光る星のピアスを手に取った。ニノは黙って見ている。私はキャッチを外し、一番目立つホールに通した。


「欲しいん?」
「ちょうだい」
「ええよ、似合うてるし!」
「ありがとう」


ファッションピアスは基本二個セットで売ってるから、もう片方あるはず、と思いニノの左耳をみれば、私がはめたピアスと同じく光るスターがあった。


「私も、ニノをピカらせたい」
「なんか真顔で言われるとドキドキするなあ」
「バカ言わないで」



都市伝説?言い伝え?信じるか信じないかは自分次第だけど、ニノが信じているんなら私も信じようと思った。

度重なる引っ越しや転校で、ニノの心は穴だらけなのかもしれない。だけどその穴が、ピアスのホールと同じく、なにかを通して癒してあげられることがあるなら、私は迷わずそうする。

自分の心に穴があいてる。言われればあながち間違いではなく、心当たりもある。似たもの同士のニノだから、同じ美意識を持つ彼だから、私たちは通ずるのかもしれない。


「そこ、空いちゃったね。私のピアス何かあげようか」
「あ!いいねん!俺ここ塞ぐことにしたんよ!」
「塞さがるの?」
「もうピアス通さへん」
「なんで?」



ピアスの穴がとじる頃



「ナマエと出逢えたお陰で、こっち越してきて良かった思うからや」

「じゃあ私もいっこ外そ」

mae tsugi