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「お母さん、ちょっと遊んでくるね」
ソファーでくつろぐお母さんに声をかける為、リビングに入った。
お母さんは片手に湯気の立ったマグカップを持ちながら、テレビを眺めていた。
「ん?なになに、もしかして、デート?」
「ち、ちがうよっ」
12月25日、クリスマス。
普段遊びに行ったりしない私が、豹じゃない人と、しかもクリスマスに遊ぶということで。
……うん。一応、デート…ってことになるのかな?
私だけがそうだと思い込んでいたら恥ずかしいので、表面的には否定しておくことにした。
「でも男の子なんでしょ?」
「うん、まあ…。なんで分かるの?エスパー?」
「お母さんは何でもお見通しなのです」
「そ、そうなの?」
お母さんはマグカップをふーふーして、一口飲んで置いた。
「ねえ、もしかして……ハセガワくん、とか言う子?」
「ええっ、なんで知ってるの??」
「うふふ。秘密よ」
ハートマークが付きそうな勢いで語尾が上がる。
ほんとに、どうして、知ってるの。
豹のお母さんって、もしかして、もしかすると。
「……超能力者?」
「そうよ」
なんてね、とお母さんはすぐに冗談を効かせたけど、私は妙に納得してしまう。豹ママ超能力者説。
「豹は何してるの?」
「寝てるよ」
「ナマエちゃんが遊びにいくことは?」
「多分知らないと思う」
「ふーん」
またあいつヤキモチ妬くわよ〜、とお母さん。なんだか楽しそう。
言ってる意味がよく分からなくて、首をかしげると「行かなくていいの?遅刻するんじゃない?」と助言された。
「やばっ。行ってきますっ」
「メリークリスマース!楽しんで!」
「はーい!」
夕方には帰ります、と言って玄関のドアを開いた。
お母さんとの会話が弾んで、予定より5分遅れで家を出る形になってしまった。小走り。
「すみません、」
「おはよ」
いつもの制服やジャージ姿じゃなく、ジーパンにダウンジャケットのハセガワ先輩が、待ち合わせ場所に立っていた。
走ったせいで髪がボサボサになってしまったので、手早く整える。
スニーカーの中の指先が冷たくて痛い。
「メリークリスマス!」
「あ、Merry Christmas!」
「本場かっけぇー」
いつもより高いテンションのハセガワ先輩が、ゆっくり歩き出したのでそれに着いていくように私も足を出した。
「さっむいもんなー、どこ行くかあ」
「できれば、あったかい場所が…」
「うん。それ超賛成」
12.11.20