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「…ん〜」
「あら、ヒョウ君おそよう」
「おそよー」
「ナマエちゃんもう行っちゃったわよ」
「…へ?」

一気に目が覚めた。

「どどどどこに?」
「デートらしいわ、ハセガワくんと」
「…まじで?」
「マジよ」

あいつ、そんなこと一言も言ってなかったべや…!!

スウェットのポッケに入れていた携帯を取り出す。受信メール4件。
部活の友達からメリクリ〜との内容が2つとクラスの女子から同じく一つ。
あとナマエから。

『雪降ってる!』

窓の外を見れば、そこには白い粉状の雪がハラハラと落ちては消えている。
あぁ、ホワイトクリスマスだべや。

「ヒョウは予定ないの?」
「誘われてるけど行かね」
「あら、誰から?」
「なんかクラスの女子」
「行けばいいのに」
「たいして喋ったこともないのに、つまんないっしょー」

母さんはエアコンの電源を切って、代わりにストーブを付けた。
やっぱりストーブが一番あったかいわー、なんて言いながら、またソファに座り直して。

「案外モテるのね」
「ふっ、まぁね〜。俺は天才だか、」
「まぁでもナマエちゃんの方がモテるか」
「………」

窓から離れてストーブの前に胡座をかいた。
暖かい空気が顔にかかって、また眠気を催しそうだ。
座った拍子に携帯がポッケから飛び出て床にスライディング。拾おうと手を伸ばした瞬間、着信が入った。

「…んん?キャプテン?」

12月の今ではキャプテンは新しい一個上の奴に代わって、俺と1on1で勝負したキャプテンは最早キャプテンじゃないんだけども。
どうも俺には、あの時の1on1のイメージが抜けないみたいで。
携帯の登録名もキャプテンのままだ。ちなみに今のキャプテンの番号は知らないので、問題ナッスィングである。

「はい、どうも」
『おぉ不破。久しぶりだな』
「お久しぶりデース」
『…お前いま暇か?』
「まぁー、ヒマっちゃヒマっす」
『今から体育館来ないか?』
「へ?なして?」
『暇なやつ集めてバスケすることになって。お前も来いよ』
「あー、じゃあ行きマッス」
『待ってるから。すぐ来いよ!』
「りょーかいっ」

電話を切って少し考える。
母さんの視線を感じた。

「デート?」

ふるふる。首を横に振って答える。

「デートとは程遠い感じ」
「ふーん?」
「てゆうか、ザ・男って感じになりそう」

うん、でも、まぁ。行ってキマス。

12.11.21