043 (3/11)
昼休み終了5分前。
屋上の扉を開いて階段を下りる。
「ナマエちゃん?」
「あ、こんにちは」
丁度3階から2階に向かう階段を下りた瞬間、後ろから声をかけられる。
ハセガワ先輩は相変わらず爽やかだ。
「教室戻るの?」
「はい」
「そっか。階段、こけないようにね」
「ふふ、気をつけます」
よっぽどのことがない限り、階段でこけたりはしないので少し笑ってしまった。
じゃあ部活で、と会釈をする。
「ナマエちゃん、ちょっと待って」
「…?」
「連絡先、教えてよ」
「あ、はい。」
コンビニ袋の持ち手と一緒に持っていた携帯を開いた。
あまり人と連絡を取らない方なので使用頻度は少ないのだけど、いつでも肌身離さず持ち歩いている。
だって豹の両親が買ってくれた大切なものだから。
「俺、受信するから」
「じゃあ送信しますね」
自分のアドレスを表示すると、赤外線通信をする。
数秒後に『送信しました』の文字を確認し、携帯をしまった。
「ありがとう。メールするね」
「こちらこそ、ありがとうございます」
そのまま別れて私は二階の教室に戻った。
しばらくして豹が帰ってきて、夏休み補習になっちった!とガタガタ震えていた。
「そんな点数悪かったっけ?」
「え、うん。英語以外赤点だや」
「あらら」
ブーブー、携帯が震えた。
五限目の先生がまだ来てないのを確認し、それでも控えめに机の下で携帯を開く。
知らないアドレスからのメールだ。
『ハセガワだよ、登録よろしく。』
シンプルなそれに『了解です』とだけ送って、ハセガワ先輩のアドレスを電話帳に登録した。
「どーにか補習免れる方法ないべかー」
「豹、筆箱は?」
「忘れた!ギャハハ」
「もー、私のシャーペン貸してあげるから頑張って授業受けなよ」
「ほーいっ」
12.06.17