042 (2/11)

「1年2組、不破くん。お話があるので至急職員室へ」

「…豹、呼び出しかかってるよ?」
「俺なんもしてないべや、なんも心当たりないべや」
「なんで怒られる前提?」

屋上まで響いた放送。それはそれは落ち着いた口調、男の声。
…俺なんかしちゃったっけ?

「とりあえず、行った方がいいんじゃないかな」
「…んー」

放送の声に負けないほど落ち着いた口調で、ナマエが俺の背中を押した。

「行ってくるべや。 ごめん、先教室行ってて」
「うん、分かった」

渋々重い扉を開いた。4階から1階までの距離は地味に長い。

途中キャプテンに会って「おう、お前今呼ばれてたろ」なんて茶化されたが、面倒くさいので無視しておいた。
肩をはたかれた。

「すんませーん、不破でーす」

夏のクソ蒸し暑い校舎で唯一、オアシスと言ってもいいくらい快適な環境のドアを開いた。
誰が俺のことを呼んだのか分からなくて、とりあえず名乗ってみた。
先生たちの視線が集中し、少しの間を置いて「おお、不破きたか」と先程も聞いた落ち着きが再び聞こえた。

「…なんすかねえ」
「先生は非常に残念だ」
「はい?」
「お前の部活動での活躍は聞いている。その健闘を汲んで見逃してやってもいいと思ったんだが、やはりエコヒイキは良くないよな」
「…あの〜、なんのことデスカ?」

話が見えない。

「つまりだな」
「はい」
「お前夏休み補習」
「…は?」

快適であるはずの空間が、俺の背筋を凍らせた。

12.06.16