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「県大会、おしかったや」
「そうだね。相手、すんごい強かったね」

三年が引退してから一夜明けた月曜日。
昼休憩に屋上でナマエと二人、飯を食べる。
いつもの他愛無い話から昨日の試合の振り返りまで、色々な話をしているとナマエが「あのね」と空を見上げた。

「なん?」
「私、やるからには頑張りたい」
「バスケ?」
「うん」
「いいじゃんっ」
「…でも目標とか、ないし。がむしゃらに頑張るよりも、何か目指したい」
「うん、うん。 じゃあさっ、全国行けばいいんでね?」
「……全国、本当に?」
「あったりまえ〜。俺らなら、行けるっしょー」
「まじか」
「まじまじ〜」

ナマエは、折れちゃいそうなくらい細い人差し指で鼻先を掻いた。
自信持て!と言いたくなるその表情。
しばらく考え込んで、静かに息を吸い込んで、こう言った。
いや、宣言した。

「うん。じゃあ、行こう。全国大会」
「やりー!」

どうせやるなら壁は高いほうが良い。

12.06.15