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豹が記者さんに取材を受けてから一週間後、市大会決勝。
男女共に、対戦相手は運悪く全中常連校で。
力戦奮闘したけど、結果は敗退。惜しくも県大会への切符は逃してしまった。
引退する三年生はみんな泣いていた。

豹たちの試合の終わりを告げるブザーが鳴った直後、近くにいた他校の監督さんが「あのオレンジの髪の子がいなかったら、決勝なんて来れてない。他の部員が他力本願すぎる」と話していたのを聞いてしまった。

その会話を耳に入れながら、タオルを被って顔が見えない豹の様子を観客席から伺った。
豹に『負け』の二文字は至極不似合いだと思う。
いつでもどんなときでも勝利の中心にいて、不敵で強く逞しい存在。
今はその背中がなんだか切ない。


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「ミョウジさん」

帰り道、女子のキャプテンに肩を叩かれた。
みんなの列から少し距離を離して、隣同士歩く。

「うちら引退しちゃうけど、頑張って成績残しなね。二年の大会だったらレギュラー入れると思うから、頑張るんだよ」
「はい。 あの、すいません。私一年なのに、三年生の引退がかかった試合に出さしてもらって、」
「いいのいいの。ミョウジさんいなかったら決勝どころか市大も、っていうよりも一回戦負けだったと思うから。一年に頼っちゃって、プレッシャーだったでしょ?」
「あ、いや…少しだけ…」
「ごめんね、頑張ってね。応援してるから!」
「ありがとうございます。精一杯頑張ります!」

たった二歳しか変わらないはずなのに、先輩がすごく大きく見えた。
三年間続けた部活を引退するって辛いはずだ。
でも泣かない先輩は強いと思った。

今日から二年間。
やれるとこまで頑張りたいです。