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9月1日、始業式。

「…と、いうことで。皆さんの元気な顔が見れて私は幸せです。やっぱり若い人は元気じゃないと!うん、私も見習って頑張ろう」

楽しかった夏休み明け一発目は、校長先生の長い話で始まった。
一ヶ月半ぶりに会ったクラスメートたちは、日焼けで黒くなったやつもいれば、少し背が伸びたやつもいる。
俺とナマエはというと、部活で日焼けすることもないし、特に身長も伸びなかったので相変わらず背の順は隣同士だ。
そんなナマエの方を見れば、ナマエは目を伏せていた。……瞑想中?

「夏休み中も、部活動に励んでいたし。実に素晴らしい!君たちは私の自慢の生徒です。これからも我が校の生徒として自覚を持って行動して下さいっ」

中学入って初めての夏休みは部活やら補習やらで何かと忙しかったような記憶がある。
まあナマエとゲームしたり、土壇場で宿題手伝ってもらったりしたし、なかなか充実していたべや。

「はい、校長の話し終わります!」

ぱちっ。ナマエの瞑想が終わったらしく、長いまつげがくりんと上がる。

「ひょう、」
「ん?」
「…おなか痛い」
「なした、変なモンでも食ったかや?」
「わかんない…どうしよ」
「とりあえず、トイレ行ってくれば?」
「……うん」

いつもはほんのりとピンクの頬が真っ白だ。ナマエは自分の存在感をなるべく消しながら、小走りで担任のところへ行ってしまった。
後ろに立っているクラスメイトの男子に「ミョウジ、どうしたの」と小声で問いかけられ「腹いてーんだって」と返す。

体育館の入り口を眺めると、すぐそこのトイレへ駆け込むナマエの姿が見えた。
この暑さで、校長のつまんない話し聞いてたら、そりゃ腹も痛くなるさ。
あれ、俺なにげに酷いこと言ってる?

なんか……俺も腹痛くなってきちゃった!
なんちって!神奈川風ジョーク!ぎゃはは!

12.08.21