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今日も練習。
入部してから幾日過ぎたある日、ちょっとした事件が起こる。

「今日もあのオレンジいないの?」

ストレッチ後、キャプテンから話しかけられた。
オレンジというのは、もちろん豹のこと。

「あー…ちょっとわかんないです。すいません」
「またサボり?」
「かもしれないです…」

豹が練習に出たのは最初だけ。
元々練習嫌いな上、その練習がつまらないと知った豹は、たちまち部活に顔を出さなくなった。
そのかわり「バスケはしてー!ナマエ1on1いこうや!」といった具合で、私は昼休みを豹と体育館で過ごしている。

「来いって言っといて。一年が練習サボるとか、俺らんときはあり得なかったから」
「あ、はっ、はい」

吐き捨てるようにキャプテンは行ってしまった。豹、来ないかな。
でも嫌なものを無理やり連れてくるのは、私としても嫌なんだよね。
毎日毎日キャプテンからの愚痴を聞くのも嫌だけど。

「…はぁ」

私がため息をついた瞬間、体育館の空気が変わった。
びっくりして辺りを見渡すが、どうやら私のため息が原因ではないみたいだ。
部員の視線の先は体育館の入口、私も同じく入口を見ればそこに居たのは豹だった。

「すんませ〜ん、遅れました〜」

誰も声を発しなかった。
体育館全体がシーンと静まる。
豹はそんなピリピリした空気に気にせず、というより気付いてない様子で、ドタドタとコートの端を通り、ステージ上で着替え始めた。

「おい」
「?」
「お前ろくに練習来てないだろ?なんだその態度。偉そうに入ってきやがって」
「………」

豹の顔がむっとした。
ステージ上に飛び乗ったキャプテンは、バッシュの紐を結んでいる豹を見下ろす形で睨んでいる。
あわわ、なんかよどんだ空気が辺り一体に……。

「別に、カンケーないっしょ」
「はあ?関係ないわけないだろ、俺は部長だぞ」
「へ〜。対したスキルも持ってないクセして、名ばかりの部長やねっ」
「…お前、俺を怒らせたいわけ?」
「事実を言ったまでだべ。実際、俺より下手っぴじゃんっ」
「………」

わわわ、豹なに言ってるんだアイツ。
キャプテンの顔が誰から見ても分かるくらい引きつった。
対する豹は、怒り震えているキャプテンを気遣うことなく淡々と紐を結び終えていた。

「口の聞き方気をつけろよ。礼儀作法は基本だぞ」
「…悔しかったら、試してみます?センパイ」

豹の不適な笑みと赤い舌にみんな釘付けだ。
ステージから軽く降りたあと、豹は適当にボールを拾ってキャプテンへと転がした。

もう練習どころじゃない。