022 (5/23)
空気が重みを持つ。
誰も言葉を発しない中、副キャプテンが仲裁に入った。
「そんな一年に構うことないよ。 時間の無駄だ」
「うるせーお前は黙ってろ」
年下に下手だと馬鹿にされたことは、キャプテンとしてのプライドを酷く傷つけたようで。
怒ってる…怒ってる、怒ってるよキャプテン。
顔がとてつもなく怖い。
「1on1、1ゴール1カウントで10点先取。 負けたら二度と俺にタメ口をきくな」
「はいはい、なんでもいいっスよ〜」
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「だから言ったべ?」
みんなの顔が唖然している。
「はぁ…はぁ…」
「10対1。 これが、俺とキャプテンの差さねっ」
先手をレイアップで決めたキャプテンだったが、その力の差は歴然だった。
個人技において、豹より上手い人なんて会ったことがない。
ダンク、ダブルクラッチ、スリーポイント、フェイダウェイ、他にもたくさんの技で部員を魅了した豹は平然としている。
「はぁ…はぁ…チクショウ」
対してキャプテンは、膝に手をつき下を向いて肩で呼吸している。
「…みんな悪かったな、練習再開してくれ」
腕で顔の汗を拭った彼は、背中を丸めて体育館から出て行ってしまった。
「…はいはい、おしまい。 練習始めんぞ〜」
全員で彼を見送ったあと、手を叩いて仕切ったのは副キャプテン。
みんながアップの態勢に移動する中で、こっそりと豹に声をかけた。
「豹っ」
「ありゃりゃあ、キャプテン落ち込んじゃったべや」
「確実に豹のせいだよっ」
「にしし!今日からちゃんと練習出るから許してくれなっ」
「……もう」