4-4. そうだな、と彼は頷く。


それから、クロロはまた一週間ほど滞在した。
マンションの権利を私に移し、預金の名義も私にしてしまった。
私に財産を作ることが、つまりは居場所を作ることに繋がるんだろうと言った。
その代わり、私にクロロ=ルシルフルの居場所になれ、と。
少しでも長くこの世界にいてほしいという懇願にも聞こえた。
残念ながら、それは私にはわからない。神様に聞いてみなくては、ね。

クロロはこの部屋を訪れるとき、ただいまと言うようになった。
私はおかえりと返すようになった。
手を繋ぐようになった。口付けるようになった。
けれど相変わらず、隣に座って本を読んでいる。

「ねえ、クロロ」

呼びかけると、彼は顔を上げた。

「永遠に続けなんていうと、大それたものに聞こえてしまうけど、
人の口から出る永遠なんて、千年や二千年じゃないんだよね。
欲しいのは、これから何年かの保証だったり、この一瞬を少しでも長く感じることだと思うんだ。
なんて謙虚なんだろう!と思うんだけど、でも、それこそが叶えるのは難しいんだね」

そうだな、と彼は頷く。

私は緋の目をひとつ、手元に置くようにした。
彼の罪を、せめて覚えているように。
いつか激動が来ることを忘れないように。

手元にあるこの書物は、当然のように普遍の永久を保ってくれるのだろうか。
失くさないように、壊さないように、汚さないように、丁寧に扱うよ。

いつか終わりが来るのだとしても、
それまでは思いを分け合って、後悔がないように。
せめて幸せな時間が少しでも長く続きますようにと、願うよ。

あなたにとって今が永遠であることを願うよ。


 main 
- ナノ -