「――それにしてもよくここがわかったね。
――たしかにね、こういうときは生粋の石凪でよかったって思う。
――崩子ちゃんは元気?
――そう。それならよかった。
――前に会ったのはいつだったかな。
――ああうん、そうだ。
あれから引っ越した?
――そっか。それなら探しやすい。
――私? 私は見てのとおりだよ。
ずっと逃亡生活だったから、中々会いに行けなくてごめんね。
萌太くんとお茶するの大好きなのになー。
――いいじゃない、たまにはデレたって。
会えて嬉しいのは退屈だからだけじゃないよ。
相変わらずの美少年でお姉さん嬉しい。
萌太くんに会えて、嬉しいよ。
――萌太くんにはいろいろと迷惑かけたよね。
今更だけど、ごめんなさい。家出してくれてありがとね。
家督を押し付けるようなことになって、私が投げ出した義務のしわ寄せがいくの、申し訳なかったから。
――駆け落ちした時点で半ば見放されたものだし、
連れ戻そうにもそのたびに監獄の中にいるもんだから、ね?
さすがに復讐者の監獄じゃ、日本の刑務所ほど容易くないみたいで。
私としては諦めてくれて助かってるんだけどね。
――監獄生活も慣れちゃえばどうってことないよ。
私は隔離されて鎖に繋がれているだけで、
こうやって話ができる程度には自由だし、
そのうち彼がなんとかしてくれるって確信してる。
――今までもそうだったから、私は待つだけなの。
もちろんそのときになったら全身全霊で助力するんだけど。
――なになに!? 彼との馴初め、聞いてくれるの?
――そんな嫌そうな顔しないでよ。そりゃ惚気に聞こえることがあるかもしれないけど。
――やった! だから好きだよ、萌太くん!
――なにから話そうかな。
彼……骸はね、六道の全てを巡ってたことがあって、その記憶を宿しているの。
輪廻に精通しているのよ。
――うん。だからこそ私のターゲットになった。
――殺せなかったこと・能力不足よりも、びっくりしたの。
彼に出逢って、死神といっても所詮この世の神だと思った。
――魅入られてしまったんでしょうね。その存在に。
"死神"を魅了するなんて、ほんとうに罪な人。
――萌太くんにも一回会わせてみたかったなぁ。
私が人生を踏み外すことを選んだ相手。
一緒に来るかと問うた彼の手を取ることができるなら、他に何もいらなかった。
――ああもう、本当に惚気になっちゃったかな? 恥ずかしい。ごめんね!
でもこんなこと本人に言うのは恥ずかしいし、まわりも歓迎しないから、聞いてくれて嬉しいんだよ。
萌太くんは聞き上手だね。
――……ありがとう。本当に、嬉しい。
――うん、そんなふうだから、私のほうは心配いらない。だから安心して。
――もういっちゃうの?
そう……崩子ちゃんに会ったらよろしく伝えておくね。
次に会うのは涙が乾く頃になってしまうかもしれないけど。
――"さいご"に会いにきてくれて本当に嬉しかったよ。ありがとう。
――おやすみ」