とある夏島にて

「わあっ」

突風に思わず目をつむる。砂をもろに被ってしまったチョッパーは、ふるふると首を振って、目を開けた。じゃりじゃりする砂の味は、ちょっとだけ海の味がして、ペッと吐きだした。それはいいけれども、幸い直撃でもとばされるのを免れた帽子は、無惨にも砂だらけだった。冬生まれのチョッパーは、暑い毛皮のセイで、夏が苦手。ロビンの傍らで、パラソルに避難していたのだ。(ああ)とつぶやいたチョッパーに、(あら、大丈夫?船医サン)とロビンはほほえみかける。のぞき込むロビンに、(大丈夫)とうなずいたチョッパーは、倒れたパラソルをみた。イスに座ったまま、ロビンはすぐにそれを能力で元通りにしてのける。すぐそばで、テーブルがひっくりかえてしまったのを目撃したナミが、悲鳴を上げて、サンジを呼んでいる声がする。(そういえば、ルフィ達はビーチバレーしてたんだっけ?)とビーチをみると、バレーボールはウソップによって死守されたが、ルフィが大騒ぎしているのが見えた。

「麦わら帽子がとばされちまった!どうしよう、俺泳げねえからとりにいけねえよ!」

今にも泣きそうな顔で、ゾロやウソップに助けを求めるルフィがいた。助けに生きたいのは山々だが、悪魔のみの能力者である以上、その前におぼれてしまう。心配そうにチョッパーはそれをみていた。

「なーにやってんのかねー、アイツら。姐さん、ご存知で?」
「お帰りなさい、カズさん。ルフィが帽子を流されてしまったみたいよ」
「さっきすげー風が吹いたんだ。どうしよう、カズ」
「だから、ゴムひも縫いつけとけっていったのになあ、あの馬鹿」

両手にチョコミントアイスクリームを持って帰ってきたカズは、あきれたように言う。(しかたねえな)とぼやいたカズは、今にも溶けかかりそうなアイスを二人に手渡した。実はもともと、ジャンケンでパーを出して負けてしまったのだ、この男。軽く準備運動を始めたカズは、オーシャンブルーを眺めた。

「あら、珍しいのね。行くの?」
「ここいらの海域は、無駄に深えんだよ。海面から見えねえ以上、しずんでんな。めんどくせえ」

(俺がいってやっから、騒ぐなよ。足下すくわれるぞ!)カズは、ありったけの声を張り上げて、駆け出す。(たのむ)とルフィに泣きつかれて、(わーったから、泣くな)と笑って、カズは海に消える。とりあえず、チョッパーはロビンに促されて、アイスを食べ始めた。一分、二分、三分、と立ったところで、全く浮いてこないカズに不安になったチョッパーは、
(大丈夫かな?)とロビンを見上げた。他のクルー達も海を食い入るように眺めている。
「彼は大丈夫よ。泳ぐの得意だもの」

平然として、にこにこと笑っているロビンに、何となく納得したもののはらはらとチョッパーは見守る。ロビンの発言に、間違ったベクトルでカズに嫉妬するヤツがいるが、それはおいておくことにして。五分後、びしょぬれの麦わら帽子を掲げた粒みたいな影に、(すげえ!)という歓声が上がった。

「ハーフさんだから。」
「え、何の?」
「ふふ、聞いてみたら?チョッパー。」

ロビンはにこりと、ほほえんだ。





(野郎のマーメイドなんて認めねぇ!)


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