狙撃手の考察

「カズ、頼むから、他当たってくれよ」
「誤爆しやしねえよ。火炎星持ってるくせに、何ビビってんの」

ウソップ工場の傍らで、専用の道具を広げていじっているカズは、愉快そうに笑った。あぐらをかいて、慣れた手つきで複雑な機械をいじったり、使い古した鞄から取ってきた爆薬を計ったりしている。意気揚々と鼻歌交じりに仕事をこなしている。ウソップはかなりビビりながら、おっかなびっくりで、(せめて離れてくれ)と懇願するが、全く相手にされず撃沈。今にも泣きそうな顔で見つめるウソップに、からかい口調でカズは突っかかる。

「たかがプラスチック爆弾じゃねえか。火炎瓶やニトロマイトじゃあるまいし、んな初歩的なミスしねーよ、バーカ。ダイナマイトよか安全だっつってるだろ、俺が設計したんだから」
「こええもんは、こええんだよ。この爆弾マニア!」
「お褒めにあずかり至極光栄の至りでございましてよ、キャプテン」
「お前、何キャラだよ」
「いやあ、ぶっちゃけ模索中?」
「わけわかんねえから」

好戦的な性格を全面に出して、挑発的な笑みを浮かべていたカズは、あは、といつものようにふざけた笑いに戻る。人をからかったり、怒らせたり、からんだりして、笑い飛ばすことが大好きというとんでもない悪癖を持つカズにちょっかいをかけられて、(グランドラインの人間てみんなこんなヤツなのか?)と思わずにはいられない。ウソップは制作の手を止めて、ため息をついた。カズという男は、生粋の爆弾マニアで、技術も知識もずば抜けて高く、戦闘能力も船長や剣豪やコックと充分為をはれるほど長けているのだが、基本的に言われるまで傍観を決め込む極端な男だった。手先こそ器用だが、たくさんの趣味を持つウソップとは異なり、あまり趣味を持ってはいない。どういう訳か、きれい好きなため雑用的役割や整理整頓、掃除を進んでやる程度だが、それ以外は言われるまでやろうとしない。本人曰く、中途半端にめんどくさがりで、いい加減だがやるときは度派手にやる豪快さがポリスーらしい。つまり変態だと脳内変換しているウソップは、よけいにたちが悪いと思っていた。

「少しは手伝えよ、ナミの武器作り!」
「バーカ、んなもん専門外だ、がんばれ発明王。俺ァ、サンジから銃のメンテ頼まれてんの」

武器庫から引っ張り出してきた銃の山を左隣において、プラスチック爆弾の山をカズは横に置いた。

「あーーっ、そんな恐ろしいもんウソップ工場の敷地内に置くんじゃねえっ!」
「めんどいんだよ、要するに」
「カズ様お願いします、勘弁してください。心臓が何個あっても足りません」
「がんばれ、精神修行だと思って」
「ううっ・・・・・」

(いつかぶん殴ってやろう)とウソップは本日何度目になるかわからない誓いを立てたはいいが,きっとそんな日は来ないだろうと言うことも薄々わかっていて、何となく空しくなっていた。ウソップは知らない。尊敬する親父もよく同じような被害にあっていたことも、親父とカズがためを張るほどのライバル同士であることも、そして、そんな気質の似たウソップに悪友を思い出し、反応が面白くてからかわれていることに本人が気づくのはまだ当分先の話である。





(あっ、動くなよ。ヘタしたら、メリー吹っ飛ぶからな)(マジで何やってんだよ、カズっ!)


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