「……、花梨!」
「―っ?!」
香穂ちゃんに腕をつつかれながら小声で名前を呼ばれ、はっとする。
周りを見渡せば、そこにいる全員の視線が私に注がれていた。
集まるように言われた大会議室。
そこで私たちコンクール参加者は、それぞれ短い自己紹介をしていた。
「ほれ、お前さんの番。」
「…あ、はい。」
蓮くんの後に続いて部屋に入ると、窓際で香穂ちゃんが手招きをしていた。
私はそれに誘われるように、ふらふらと香穂ちゃんの横に並んだのだった。
「普通科2年2組、麻宮花梨です。」
私が香穂ちゃんの横に並ぶのを確認して、先生は話し始めた。
金澤紘人という名前の音楽教師だということ。
コンクール担当になったということ。
コンクールの趣旨。
今日、ここに集めた理由。
扉側のヤツから順な、という言葉とともに、自己紹介は始まった。
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