07-1
初めて麻宮花梨を見たとき我が輩は自分の目を疑った。
名前どころか見たこともない者の横に、よく知った者が寄り添うようにいたから。
初めに頭をよぎった疑問は、なぜあの者がここにいるのか。
アルジェントであれば、持ち場を離れることは許されないはず。
次に頭に浮かんだ疑問は、麻宮花梨はあの者の存在に気づいているのかどうか。
あれだけ近くにいる、いや肩や頭に乗ったりしているのに、見る限りでは気づいている素振りを見せない。
我が輩は何度かあの者たちに接触しようと試みた。
しかし、麻宮花梨どころかあの者にも接触することかなわず、結局1年が過ぎ去ってしまっていた。
ようやく麻宮花梨と話すことができた時、今度は自分の耳を疑った。
麻宮花梨はファータを見ることができる。
いや、正確には見ることができていた、か。
だが今ではファータが見えなくなっていたのだ。
そして判明した事実。
ファータが見えなくなっていた理由。
なぜ、このタイミングで再びファータが見えるようになったのか。
わからないことも、まだまだたくさんある。
麻宮花梨は、もうバイオリンは弾けないと言っていた。
ピアノも弾けるが、人前では弾きたくないとも言っていた。
それでも我が輩は麻宮花梨を学内コンクールに参加させようと思った。
疑問をとくために。
あの者の願いを叶えるために。
そして、何より………麻宮花梨のために。
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